過去最多164軒が参加!「アートフェア東京2018」の注目展示をピックアップ

2018年03月10日 15:04 カテゴリ:最新のニュース

 

日本最大級のアートフェア「アートフェア東京2018」が3月9日に開幕した。今回は「Art is Life」をテーマに過去最多の国内外164ギャラリーが参加。今回はその中から、いくつかの注目展示をリポートする。

 

■若手アーティスト支援の2つの新企画

 

まず今年の大きな特徴は、若手アーティスト支援の2つの新企画が誕生したことだ。1つ目は、各国駐日大使が推薦する若手アーティストの国際展「World Art Tokyo―パンゲア・テクトニクス―」。中国、コンゴ、コロンビア、イタリア、フランス、イスラエルなどの9カ国の大使館が選んだ、各国代表の新鋭アーティストの作品を、東京藝術大学大学院の黒沢聖覇がキュレーションしている。2つ目の新企画は、東京藝術大学、筑波大学、女子美術大学、多摩美術大学、東京造形大学、武蔵野美術大学の芸術系6大学の学生によるグループ展「Future Artists Tokyo―スイッチルーム―」。ともに入場無料のロビーギャラリーで開催されており、今後が期待されるアーティストたちの現在地点を知ることができる。

 

「Future Artists Tokyo―スイッチルーム―」展示風景

「Future Artists Tokyo―スイッチルーム―」展示風景

 

「World Art Tokyo―パンゲア・テクトニクス―」 Gianluca Malgeri(イタリア)による枝を使用したインスタレーション《Planetary Garden》

「World Art Tokyo―パンゲア・テクトニクス―」 Gianluca Malgeri(イタリア)による枝を使用したインスタレーション《Planetary Garden》

 

■ペロタンブースの徐震(シュー・ジェン)、Occident/祥雲ブースの縄文土器

 

メイン会場でまず目を引いたのは、昨年六本木に世界17番目のスペースをオープンし、今回がアートフェア東京初出展となるペロタンのブース。床に敷かれた畳や壁面のプリント、そして中国の徐震(シュー・ジェン)による彫刻作品が圧倒的な異彩を放っていた。そのペロタンの向かい側には、Orient Occident/祥雲のブースが。こちらでは「PRESENCE – JOMON」と題し縄文時代の土器や土偶、土器片、石器などを展示しており、一部はなんと手に取りながら鑑賞可能。博物館・美術館とはまた違う鑑賞体験が楽しめるのは、アートフェアの醍醐味とも言えるだろう。ギリシャ神話や仏像のエッセンスが入り混じったペロタンブースと、縄文の太古の記憶に触れることができるOccident/祥雲ブースは、ともに会場内で異空間のように存在していた。

 

ペロタンブースの徐震(シュー・ジェン)作品

ペロタンブースの徐震(シュー・ジェン)作品

 

Orient Occident/祥雲ブース。こちらの縄文土器は手に取りながらの鑑賞も可能

Orient Occident/祥雲ブース。こちらの縄文土器は手に取りながらの鑑賞も可能

 

縄文期の石器も間近で鑑賞することができる

縄文期の石器も間近で鑑賞することができる

 

■ケンジタキギャラリー・横山奈美の最新作

 

ケンジタキギャラリーのグループ展には、昨年「日産アートアワード2017」でオーディエンス賞を受賞した横山奈美が参加。ネオン管の「光」と、その後ろの「ボロのような」配電線を均一に描いた作品を展示している。また今回は、新たにブロンズの立体作品にも挑戦。西洋に憧れる少女像は、「アメリカ人になりたかった幼い頃の自分」をモチーフにしたのだという。

 

ケンジタキギャラリーで展示中の横山奈美

ケンジタキギャラリーで展示中の横山奈美

 

今回は新たにブロンズの立体作品にも挑戦。どこか「お地蔵さん」のような愛らしさも滲む

今回は新たにブロンズの立体作品にも挑戦。どこか「お地蔵さん」のような愛らしさも滲む

 

■名古屋画廊「中西夏之展」

 

名古屋画廊ではハイレッド・センターの一員として活躍し、60年代後半からは様々な主題が連鎖する絵画を発表した中西夏之(1935~2016)の個展を開催。キャンバスに弓を貼り付けた《弓形》シリーズなど、貴重な作品の数々を紹介している。4月24日~5月14日には名古屋画廊で「中西夏之展―緩やかにみつめる時間のために―」が開催され、アートフェアと異なる絵画も多数展示される。

 

名古屋画廊の中西夏之展。奥の作品は、名古屋と横浜で開催の「モネ それからの100年」展でも展示される

名古屋画廊の中西夏之展。中央の作品は、名古屋と横浜で開催の「モネ それからの100年」展でも展示される

 

キャンバスに弓を貼り付けた《弓形》シリーズや、小品も展示

キャンバスに弓を貼り付けた《弓形》シリーズや、小品も展示

 

■GALLERY KUGOブース・広垣綾子のガラス作品

 

富山・GALLERY KUGOのブースでは、幾千もの極細のガラス棒を用いて制作する広垣綾子が展示。「国際ガラス展・金沢 2016」で大賞を受賞したミステリアスな作品《Ambiguity》をはじめ、ガラスとフィギュアを組み合わせて「目に見えない友達(=imagenary friend)」を表現した新作も魅力的だ。

 

GALLERY KUGOブース 広垣彩子

GALLERY KUGOブース 広垣彩子

 

最近フィギュアの造形を勉強し、新たに「足」をつけた立体作品を生み出した。左の大作が「国際ガラス展・金沢 2016」大賞受賞作の《Ambiguity》

最近フィギュアの造形を勉強し、新たに「足」をつけた立体作品を生み出した。左の大作が「国際ガラス展・金沢 2016」大賞受賞作の《Ambiguity》

 

■Gallery OUT of PLACEブース・西川茂と中島麦の2人展

 

Gallery OUT of PLACEブースは、気鋭の画家の2人展形式。西川茂は建設あるいは解体中の建造物を覆う「シート」を題材に制作している。今回描いたのは、昨年アートフェア参加のために訪れた香港の光景。香港の街の活気がシートの有機的な筆触にも反映されており、2019年開館予定のM+ミュージアムを題材とした大作は、香港のアートシーンの大きな躍進も感じさせる。また中島麦は、キャンバスにアクリル絵具を垂らして「大きなドット」をつくった絵画作品を展示。ミニマルな画面やテクスチャー、所々重なって層を成す鮮やかな色彩に目を奪われる。

 

Gallery OUT of PLACEブースの西川茂。左の大作が、建設中のM+ミュージアムを題材とした作品

Gallery OUT of PLACEブースの西川茂。左の大作が、建設中のM+ミュージアムを題材とした作品

 

中島麦は絵画のなかで大小の「ドット(=ピクセル)」を表現している。今回の作品は「大きなドット」を表したもの

中島麦は絵画のなかで大小の「ドット(=ピクセル)」を表現している。今回の作品は「大きなドット」を表したもの

 

気になる作品について、作家本人やギャラリストと気軽に話ができることもアートフェアの大きな魅力の一つ。ぜひ様々な角度から、作品の面白さを見つけてほしい。

(取材:岩本知弓)

 

アートフェア東京2018

【会期】

<プレスビューなど>(招待制)

3月8日(木) 13:00 ~ 20:00

<一般会期>

3月9日(金) 11:00~20:00

3月10日(土) 11:00~20:00

3月11日(日) 11:00~17:00

【会場】東京国際フォーラム・ホール E、ロビーギャラリー

【料金】1DAYパスポート 前売券 3,000円(税込)/当日 3,500円(税込)

 

【関連リンク】アートフェア東京

【関連リンク】美大とコラボの新企画も!「アートフェア東京2018」に国内外164軒が参加

 

 


関連記事

その他の記事