永井画廊の企画第3弾は「アール・ブリュット」 ―巨匠ハンス・クルージーの東京初個展を開催

2017年08月30日 17:46 カテゴリ:最新のニュース

 

 

今春新たなスペースを銀座8丁目にオープンした永井画廊が、「梅原龍三郎展」「高木公史展」に続く企画展第3弾として、20世紀後半スイスのアール・ブリュット最重要作家であるハンス・クルージー(1920~95)の東京では初となる個展を開催する。

 

スイス・チューリヒに生まれて間もなく里子に出され、10歳で孤児院に入れられたクルージーは、長じて同市の駅前大通りで30年にわたって花を売りながら生活。55歳より安価な紙やボール紙、包装紙にグワッシュ、フェルトペンなどで身近な人物や小動物、牧場風景などを独学で描き1枚数百円で売り始めた。

 

素早く生き生きとした筆触による自由で感覚的なその絵画表現は次第に注目を集め、1981年にスイスの現代美術ギャラリーが扱うようになってからは1枚数万円の値で取り引きされる人気作家に。以降クルージーは20世紀前半スイスのアール・ブリュットの三大巨匠アドルフ・ヴェルフリ(1864~1930)、アントン=ミュラー(1869~1930)、アロイーズ・コルバス(1886~1964)に連なる、20世紀後半の最も重要なアール・ブリュット作家に位置づけられる。今日では各国のアール・ブリュット/アウトサイダー・アートのコレクションおよび研究機関に作品が収蔵され、その文化的・市場的評価は高まり続けているという。

 

永井龍之介代表は今展を「梅原展、高木展と並ぶ、永井画廊のこれからの方向性を示す3本柱のひとつ」と語る。3本の柱とは、梅原はじめ日本の近代絵画を代表する作家を紹介していくこと、新鋭から物故まで優れた作家を発掘し再評価を促していくこと、そして“本来の意味”でのアール・ブリュットを広めていくことだ。

 

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて東京都が展示施設を整備するなど、近年は各地で普及・啓蒙が進められているアール・ブリュット。日本では障害者によるアートとして認識されることが多いが、本来は専門教育を受けていない人が独自の感性や手法によって創り出した表現を指す言葉だ。「野に生きたクルージーの作品は、自然の中からぽっと生み出されたように無垢で作為を感じさせない、まさに“生の芸術”です。障害を持った方の作品だけでなく、彼のように美術史の主流に成り得なかった芸術家たちを取り上げ、広がりのある本来のアール・ブリュットを伝えていきたい」。

 

今展では、2012年にクルージーの国内初個展を開催した京都のギャルリー宮脇の協力により、画家が遺した作品より厳選した約20点を展示する。愛らしくユーモアに溢れたクルージーの世界は、多くの鑑賞者を絵の世界に遊ばせてくれるはずだ。

 

 

 

展覧会会期中には2つのトークショーを開催。美術評論家・解剖学者の布施英利氏による「ハンス・クルージーの魅力について」を9月2日(土)15時から、ミシェル・テヴォー著『アール・ブリュット』を翻訳、刊行した杉村昌昭氏による「アール・ブリュットとは何か」を9日(土)15時から。いずれも定員50名、会費1000円。

 

『開運!なんでも鑑定団』でお馴染みの永井氏が美術史上の名作を解説

また、永井画廊では9月24日より全10回の連続講座「永井龍之介スペシャルトーク 『知識ゼロからの名画入門』」をスタート。永井氏の新著『知識ゼロからの名が入門』(幻冬舎刊)をテキストとして、ダヴィンチやラファエロ、ミケランジェロからセザンヌ、ゴッホ、ピカソ、ウォーホール、北斎まで同書で取り上げた作家、作品のなかから各回5作品を選び、価値と価格、流通、コレクター、画商、贋作事件など社会経済学からの切り口で解説する。

 

永井画廊立川ギャラリーを会場に毎月最終日曜日15:00~17:00に開催し、各回定員50名(先着順)、1回1,500円(10回分一括払いの場合は10,000円)。申込みは電話、FAX、E-mailにて。

 

 

【展覧会】―スイス アールブリュットの巨匠― ハンス・クルージー展
【会期】2017年9月1日(金)~30日(土)
【会場】永井画廊(東京都中央区銀座8―6―25河北新報ビル5F)
【TEL】03-5545―5160
【営業時間】11:00~19:00
【休廊】日曜、祝日

 

【関連リンク】永井画廊

 


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