吉祥寺に「ゾウのはな子」像―笛田亜希が原型制作、街の新たなシンボルに

2017年05月25日 11:50 カテゴリ:最新のニュース

 

 

2016年5月に国内最高齢の69歳で死んだアジアゾウ「はな子」の銅像が完成し、5月5日、東京のJR吉祥寺駅北口ロータリーに設置された。

 

1949年に来日したはな子は、上野動物園を経て54年より井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)で飼育され、タイと日本の友好の象徴として世代を超えて人々に愛されてきた。昨年9月のお別れ会には約2,800人が訪れ、はな子への感謝の言葉とともに花を手向けている。銅像の制作費は邑上守正市長を委員長とする実行委員会の呼びかけにより、故郷のタイをはじめ各地から集まった募金約1,800万円が充てられた。

 

銅像は全長2.5メートル、高さ1.5メートル。はな子がよく見せた右前脚を軽く上げて挨拶する姿を再現したもので、鋳造は富山県高岡市の梶原製作所が行った。原型を制作した美術家の笛田亜希は「造るならば、はな子が元気な頃のこのポーズと決めていた」と語る。1974年武蔵野市生まれ。幼い頃から井の頭公園や文化園に通い「物心つく前から、身近なところにはな子がいた」。東京藝術大学大学院を修了後、銀座・村越画廊などでの個展を中心に、絵画や立体、インスタレーションと多様な作品を発表。2002年より、文化園と消えゆく動物たちをモチーフにした《Animaless Zoo Project》を手掛けている。

 

少しでも実際のはな子に近づけたいと、修正作業を繰り返した

 

原型制作では、精密で再現性が高い粘土での制作にこだわり、梶原製作所に足を運んで休日も夜中も修正作業を行ったという。色味は、文化園にある北村西望《晩鐘》と同じ色味になるよう幾度も職人と話し合い、体のシミなど細部に至るまでこだわった。「本当に多くの方が協力して下さり、改めてはな子がいかに愛されていたかを知りました」。

 

一方で、文化園にはな子がいないことが「さびしい」と笛田は言う。今も空っぽになったゾウ舎を訪れる人は後を絶たない。「私の野望は、いつかはな子の運動場に実物大の銅像を立てること。子どもたちが入って遊べるような、そんな場にできればと思っています」。

 

井の頭自然文化園では、はな子の死後1年目を迎えて5月28日まで献花台や記帳台等を設置。また当面の間、新規解説パネルを掲示し、ゾウ舎入口では過去の映像上映が行われる。

 

駅前ロータリーの中央広場。新たなシンボルとなったはな子の像に人々が集う。

 

親子で写真を撮る人、しみじみと像に触れる人。思い思いの形で皆がハナ子をなつかしんでいた。

 

【関連リンク】笛田亜希 公式サイト 井の頭自然文化園

 


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