「世界は物語で出来ている。」―山本宗平絵画展 開催

2017年02月08日 09:47 カテゴリ:最新のニュース

 

《言葉》

 

柔らかな質感で日常を切りとり、そこに豊かさを織りこむ山本宗平。アートギャラリー884では1年ぶりとなる個展が開催される。

 

1980年に生まれた山本は、幼いころ、父親がさらっと描いた自転車の絵をきっかけに、物のかたちが紙のうえで再現されていく様に感動をおぼえ、絵画に対する興味を深めていく。

 

転機となったのは1999年。受験に失敗し「藝大だけが全てではない」と自らを奮い立たせ、親類の住むロサンゼルスへ。もともと予備校時代にホッパー(Edward Hopper, 1882-1967)から「究極に影響」を受けていた山本は、アメリカでの生活を次の舞台として選んだ。現地の語学コースに通いながら、アメリカの美術学校に入ることを決め、2002年、サンフランシスコに校舎をかまえるAcademy of Art University油画科に入学。その決め手となったのは「基礎を重視した教育スタイル」だったという。大学では解剖学をとおして人体の構造や仕組みを勉強し、「物のかたちがとれないことで描きたいものが描けないのは一番の問題」という信念のもと、基礎をたたきこんだ。

 

印象に残っている講義がある。教授が黒板に1本の線を描き、「これはどんな線だ?」と問うた。山本が「Straight line(直線)」と応じると、教授は定規を当てて、もう1本の線を引いたという。本当の直線ではないものを直線と言い切ってしまう観念を恐れよ、山本にはそう伝わった。このエピソードについて山本は「作家として生きるということは突き詰めて考えること、こだわりを持つこと、なにより表現の心・信念を貫くことなのではないか。」と思い至る契機になったと述懐している。

 

2006年に帰国してからは個展を中心に活動をし、2012年には求龍堂から『山本宗平画文集 世界は物語で出来ている。』を発刊した。山本の作品にはふとした日常の一場面が描かれており、そこに登場する人たちには会話があり、生活があり、過去があり、未来があり、物語がある。作品を目の前にした我々は、その物語のなかに引き込まれることになるだろう。

 

今回は水彩、鉛筆画、油絵など主に小品を中心とした約20点の展示となる。

 

左より《思い出話》、《街の畔り》、《いつもの時間》

 

【会期】2017年2月11日(土)~2月26日(日)

【会場】アートギャラリー884(文京区本郷3-4-3 ヒルズ884 お茶の水ビル1F)

【TEL】03-5615-8843

【休廊】月曜

【開廊】11:00~18:30(最終日は16:00まで)

【料金】無料

 

【関連リンク】アートギャラリー884

求龍堂:『山本宗平画文集 世界は物語で出来ている。』

 


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