「5Rooms - 感覚を開く5つの個展」が開幕 5名の作家が語る見どころとは?

2016年12月23日 17:59 カテゴリ:最新のニュース

 

齋藤陽道

 

12月19日、神奈川県民ホールギャラリーの「5Rooms - 感覚を開く5つの個展」が開幕した。今展は5つの展示室を部屋に見立て、「心に響く」をキーワードに選ばれた気鋭の作家5名を個展形式で紹介するもの。出品作家の出和絵理、染谷聡、小野耕石、齋藤陽道、丸山純子に、その見どころを聞いた。

 

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展示はRoom1の出和絵理からスタート。紙のように薄くのばした真っ白な磁器の、繊細な造形が味わえる。今回は「水辺や貝殻のイメージ」を表現するため、作品を下からライティングし、光と影の静謐な空間をつくりだした。展覧会に関しては「”開かれた場所”である神奈川県民ホールに、自分の部屋という”閉じ込めたもの”を持ち込む、面白い試み。部屋は孤独な場所とも言えますが、それをネガティヴに捉えるのではなく、閉じ込めることによって表現を強め、儚さや美しさに昇華していきたいです」と思いを述べた。

 

Room2の染谷 聡は、漆と真正面から向き合い、そのあり方を問い続ける作家。気になって拾った小枝や石を、遊び心を交えながら漆と組み合わせ、従来とは異なる表現を生み出している。「漆という素材の”加飾性”に注目し、枝や石を飾るための器として制作しています。技術面をフィーチャーされやすい漆ですが、その中にある情緒的な意味合いを感じてほしいです」。会場では竹や卵殻、コンクリートなど様々な素材を用いた新作が並ぶ。

 

出和絵理《Forest》 この作品では上からライトを当てており、また違った表情が楽しめる

 

出和絵理 会場には雪景色を思わせるような澄んだ緊張感が広がる

 

「あそび」をキーワードに、新たな漆作品を生み出す染谷 聡

 

Room3は「VOCA展2015」のVOCA賞受賞で話題を集めた小野耕石。シルクスクリーンで100回ほどインクを刷り重ね、ドット状の「柱」を無数に生み出すことで、版画の概念を覆すような立体的な作品を生み出している。今回は版画を壁にかけるのではなく、台にのせて展示。「上から作品を覗き込んでもらうことで、作家が制作する際の目線と鑑賞者の目線が同じになります。色々と角度を変えて、光や影の移ろいを感じてもらいたいです」。

 

Room4では2014年にワタリウム美術館で個展を開催した写真家・齋藤陽道が、スライドショー形式で展示。生命のうつろいや森羅万象の不思議に眼差しを向けた写真が、1枚当たり20秒間写し出される。「次のスライドに移り変わるまでの10秒間は、2枚の写真が重なるようにしています。作品を1枚で完結させるのではなく、重なりを持たせるためです。写真の順番はランダムにしているので、自分自身びっくりするような並びや重なりが生まれることも。世界はどんな形であれ繋がっている、ということを伝えられたら嬉しいです」。

 

ラストを飾るのは、廃油石けんや廃木材などを用いてインスタレーションを展開する丸山純子。今回は「痕跡や気配、幽霊的なもの」をキーワードに、できる限り照明を暗くした700㎡の展示室で、壮大なインスタレーションをみせる。「石鹸を素材としているのは、水と油という”相反するもの”が組み合わさって出来たものだからです。生と死、汚と美など相反するものの共存を、直観を大事にしながら見ていただきたいです」。

 

Room1の出和からはじまり、Room5の丸山に至るまで、それぞれの部屋の照明は徐々に暗くなってゆく。個展形式ではあるが、5作家の個性がそれぞれ際立ちながらも調和しあい、独立した”個室”ではなく、全体が緩くつながるような空間が広がっているのだ。会期中にはアーティストトークも開催。各作家の言葉を更にじっくりと聞くことができるだろう。

 

小野耕石《Hundred Layers of Colors》 横から見ると、鍾乳石のように無数のカラフルなドットが突き出ているのが分かる

 

小野耕石 動物の頭骨やセミの抜け殻を用いた、立体の版画作品も紹介

 

丸山純子《名もなき船のモニュメント》 「死を思う」をテーマに、700㎡の最大の展示室に展開されている

 

廃油石鹸と水を用いた、丸山純子の《水滴》

 

左より 齋藤陽道、出和絵理、丸山純子、染谷聡、小野耕石 展覧会初日のレセプションにて

 

 

【展覧会】5Rooms - 感覚を開く5つの個展

【会期】2016年12月19日(月)~2017年1月21日(土)

【会場】神奈川県民ホールギャラリー(横浜市中区山下町3-1)

【TEL】045-662-5901

【休館】2016年12月30日(金)~2017年1月4日(水)

【開館】10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)

【料金】一般700円 学生・65歳以上500円 高校生以下無料

 

■アーティストトーク ※予約不要

技法のガラパゴス的進化 表現の形
登壇:出和絵理、小野耕石
日時:2016年12月24日(土) 14:00~

 

インスタレーション – 思いが形になる時
登壇:丸山純子
日時:2017年1月7日(土) 14:00~

 

「在る」ことへのアプローチ
登壇:染谷 聡、齋藤陽道(筆談)
日時:2017年1月15日(日) 14:00~

 

■視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ ※要予約、応募多数の場合抽選
目の見えない人と見える人が一緒に、見えていることや感じていることを言葉にして伝え合いながら鑑賞する。約2時間30分で5つの展示室を巡る。

 

日時:2017年1月9日(月・祝)・14日(土) 各日10:00~12:30
申込み受付期間:2016年12月1日(木)~ 12月25日(日) ※抽選あり、12/27(火)頃結果通知
定員:各回15人
参加費:無料(要展覧会チケット)
対象:中学生以上(障害の有無に関わらずどなたでも)
申込み方法:①氏名、②年齢、③連絡先(携帯電話など)、④障害の有無と種別、⑤参加の動機(期待している事など)、⑥参加希望日 を記載の上、下記メールアドレスまで。電話、展覧会会場でも受付可。
視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ kansho.ws@gmail.com
電話 045-633-3795(神奈川県民ホール事業課ギャラリー担当/平日10:00-18:00)

 

【関連リンク】神奈川県民ホールギャラリー

 

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