[寄稿] 鈴木其一 江戸琳派の旗手:高瀬晴之

2016年11月15日 18:42 カテゴリ:最新のニュース

 

鈴木其一「群鶴図屏風」江戸時代後期 紙本金地著色 ファインバーグ・コレクション

鈴木其一「群鶴図屏風」江戸時代後期 紙本金地著色 ファインバーグ・コレクション

 

江戸初期の京都で俵屋宗達(17世紀前期に活躍)が創始した琳派は、約100年後に尾形光琳(1658~1716)によって、江戸時代絵画の中でも最も華麗な装飾様式として確立されました。さらにその約100年後に、江戸の地で琳派の再興を図ったのが姫路藩酒井家に生まれた酒井抱一(1761~1828)です。彼は京都の琳派様式からさらに写実的で洗練された草花図を描くようになり、後に江戸琳派と呼ばれる独自の様式を確立しました。

 

鈴木其一「河合寸翁像」天保8(1837)年 絹本著色 姫路市立城郭研究室蔵

鈴木其一「河合寸翁像」天保8(1837)年 絹本著色 姫路市立城郭研究室蔵

その抱一の最も秀でた弟子が鈴木其一(1796~1858)です。其一は1813(文化10)年、抱一に入門。4年後に兄弟子で酒井家家臣の鈴木蠣潭(れいたん)の急死を受け、鈴木家の家督を継ぎました。多くの抱一門弟の中でも特に優れた画才を発揮、早くから師抱一の厚い信頼を得ていました。抱一が没して以降は、一門の中でも圧倒的な存在感を示し、多くの弟子を育成して江戸琳派の存続に大きく貢献しました。かつては抱一の弟子のひとりという扱いでしたが、近年ではその独自の表現が高く評価され、琳派を代表する絵師の一人としての地位を獲得しています。

 

本展では近年の其一研究の成果を踏まえながら、其一の生涯と画風の変遷を丁寧に辿ります。抱一に弟子入りし江戸琳派画風を習得した初期、師の没後、画風の転換を試みる「噲々(かいかい)」時代、息子守一に家督を譲り、「菁々(せいせい)」と称した晩年と、時代を追って作品を紹介いたします。師である抱一と兄弟子蠣潭の作品、其一の弟子や、弟弟子たちの作品もあわせて展示し江戸琳派の流れをたどります。時代順の展示のみならず、節句画、仏画、能画など江戸琳派に特徴的なテーマは、時代を縦断しながら紹介し、其一の特色に迫ります。

 

国内の主要な作品だけでなく、アメリカのファインバーグ・コレクションからも「群鶴図屛風」などの代表作が出品されます。其一の肖像画の傑作で、江戸時代後期の姫路藩の名家老を描いた「河合寸翁像」は姫路会場のみの出品です。

(姫路市立美術館学芸課長補佐)

 

 

【展覧会】鈴木其一 江戸琳派の旗手

【会期】2016年11月12日(土)~12月25日(日)

【会場】姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町68―25)

【TEL】079―222―2288

【休館】月曜

【開館】10:00~17:00(入場は16:30まで)

【料金】大人1,200円 大学・高校生600円 中学・小学生200円

【関連リンク】姫路市立美術館

 

講演会「米国における琳派コレクション」

【日時】2016年12月4日(日) 14:00~

【講師】ジョン・T・カーペンター氏(日本美術キュレーター/ニューヨーク、メトロポリタン美術館)

【会場】姫路市立美術館 2階講堂

【料金】無料、先着順(定員100名)

 

講演会「鈴木其一と江戸琳派の魅力」

【日時】2016年12月11日(日) 14:00~

【講師】岡野智子氏(細見美術館 上席研究員)

【会場】姫路市立美術館 2階講堂

【料金】無料、先着順(定員100名)

 

 


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