「今」と「明日」を見据えて―大樋陶冶斎が和光ホールで3年ぶりの個展を開催

2016年10月31日 17:25 カテゴリ:最新のニュース

 

 

大樋焼350年にあたる本年1月、十代大樋長左衛門の名跡を長男・年雄に譲り、新たな歩みを始めた大樋陶冶斎(1927年金沢市生まれ、文化勲章受章者、文化功労者、日本藝術院会員、日展顧問、現代工芸美術家協会理事長)が、和光ホールでは3年ぶり、「陶冶斎」と号して初となる個展を開催する。

 

大樋焼は、1666(寛文6)年に加賀藩五代藩主・前田綱紀の意向を受けた土師長左衛門が、大樋村(現・金沢市大樋町)に築窯して創始。裏千家の茶道と樂焼の流れを汲みながら、能や茶が広く嗜まれ、独特の美意識が育まれる金沢にあって、多様な伝統工芸と結びつきながら発展を遂げてきた。大樋の土と手捻りによる造形、深みのある飴釉を大きな特色とする。

 

九代大樋長左衛門の長男として生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)工芸科で学んだ陶冶斎は、日本伝統工芸展で父とは異なり、日展、日本現代工芸美術展を発表の場とする。戦後、大量に流入した海外のデザインや建築に触れ、自らも積極的に各国を訪ねる中で感性を磨いた陶芸家は、類を見ない新たな気風の陶芸表現で頭角を現し、日展や現代工芸美術家協会などで要職を歴任。99年に日本藝術院会員に就任し、2004年に文化功労者、11年には文化勲章を受章するなど、今日に至るその活躍は広く知られるところである。

 

一貫して創意創作を旨とし、「伝統とは守るものではなく残ったものである」と語る陶冶斎。「技は先人から学ぶことが出来るが、“創る”というのは人がやらなかったことをやること」と、大樋焼の伝統と技を継承しつつも、変わりゆく時代と向き合いながら「今」と「明日」を見据え、制作に挑み続けている。

 

今展においても、《大樋黒陶「夢見る童」壷》、《大樋緑釉黒絵花鳥文壷》の大ぶりのどっしりとした量感が存在感を放つ一方で、鳥や動物を自在に表した陶絵や書、墨絵は軽妙洒脱。今春、北陸では初めて一般公開されたいしかわ動物園の「シロフクロウ」を、いち早く取り入れた意匠も見られる。円熟の境地にあるも感性は瑞々しく、独創的な幅の広い世界は味わいを増すばかりといえよう。

 

日本の美術・工芸界を長年にわたり牽引し、大きな節目を迎えてなお自らの美意識のさらなる高みを目指す大樋陶冶斎。新作の壷や花入、陶絵、書、墨絵など約80点による展観を通じて、伝統と革新の体現に挑むその姿を感じてほしい。

 

 

 

 

【会期】2016年11月4日(金)~31日(日)
【会場】和光ホール(東京都中央区銀座4-5-11 和光本館6階)
【TEL】03-3562-2111
【休廊】無休
【営業時間】10:30~19:00 ※最終日は17時まで

 

【関連リンク】和光ホール

 


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