[寄稿]ル・コルビュジエと無限成長美術館-その理念を知ろう:寺島洋子

2016年07月26日 15:05 カテゴリ:最新のニュース

 

本館外観 1959年 撮影:東京フォトアート/写真提供:国立西洋美術館

 

2016年7月17日、第40回世界遺産委員会において、フランスを代表国として日本を含む7ヶ国で共同推薦した「ル・コルビュジエの建築作品」(含国立西洋美術館の本館)を世界遺産に登録された。本小企画展は、世界遺産を契機に当館に興味を持っていただいた方々に、ル・コルビュジエが設計した本館の特徴を、パネルを中心に模型3点とビデオで紹介するものである。

 

ル・コルビュジエは、自動車や家具の設計と同様に建築においても、まずその建物の原型となるプロトタイプを研究して、それを何度も書き直すという方法で建物を設計することがあった。当館の本館もそうしてまとめあげた《無限成長美術館》のプロトタイプを基にして建てられたものである。

 

美術館のアイディアは、1929年、スイスのジュネーヴに計画された《ムンダネウム》の《世界美術館》に始まり、その後幾度も練り直されて、1939年に《無限成長美術館》のプロトタイプとしてまとめられた。

 

コレクションの増加に伴い建物を増築(成長)させるプロトタイプの基本的な理念は、敷地などの制約もあり本館で実現されることはなかったが、本館はピロティ、建物の中心にあるホール、四角い螺旋状の空間、中3階、建物各所の寸法の規格化といった、プロトタイプの構想をもっともよく現している美術館のひとつである。

 

本展では、国立西洋美術館設立のきっかけとなった松方幸次郎とそのコレクションを導入とし、ル・コルビュジエが考案した近代にふさわしい建築の理論と無限成長美術館の理念をとりあげる。そして、その理念を基に1959年に完成した本館に実現されたプロトタイプの特徴となる様々な要素を紹介する。本展を参考に、本館の特徴を実際にご覧いただき、その空間を体験し、ル・コルビュジエが設計した建物への理解を深めていただければ幸いである。

(国立西洋美術館主任研究員)

 

撮影:東京フォトアート/写真提供:国立西洋美術館

 

建物の中心にある19世紀ホール 1959年 撮影:東京フォトアート/写真提供:国立西洋美術館

 

Fun with Collection 2016 ル・コルビュジエと無限成長美術館-その理念を知ろう

【会期】2016年7月9日(土)~9月19日(月・祝)

【会場】国立西洋美術館(東京都台東区上野公園7-7)

【TEL】03-5777-8600

【休館】月曜、ただし8月15日(月)、9月19日(月・祝)は開館

【開館】9:30~17:30(金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)

【料金】一般430円 大学生130円

【関連リンク】国立西洋美術館

 


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