第57回ヴェネチア・ビエンナーレ、日本館出品作家は岩崎貴宏に決定

2016年06月15日 19:26 カテゴリ:最新のニュース

 

「見に来た人が楽しい展示にしたい」

 

(左から)岩崎貴宏、鷲田めるろ

 

国際交流基金は6月15日、第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2017年5月13日~11月26日開催)の日本館の出品作家とキュレーターを発表、作家は岩崎貴宏に、またキュレーターは鷲田めるろになった。

 

今回出品作家に選ばれた岩崎貴宏は1975年広島県生まれで、現在も広島を拠点に活動を続けている。近年では「六本木クロッシング2007」や「ヨコハマトリエンナーレ2011」などに参加。また昨年は「日産アートアワード」に参加したことも記憶に新しい。またキュレーターの鷲田めるろは1973年京都府生まれ。金沢21世紀美術館のキュレーターとして妹島和世+西沢立衛/ SANAAや島袋道浩などの個展を手がけており、2010年に金沢青年会議所が主催した「かなざわ燈涼会」で岩崎に作品を依頼し、展示した経緯がある。

 

歯ブラシや雑巾など身近なものを素材に使い、繊細な作品を作り上げることで知られる岩崎。「Upside-down Forest -逆さにすれば森-」(仮)と題された今回の展示プランでは、4点の新作(《アウト・オブ・ディスオーダー》2点、台風で壊れた厳島神社をモデルにした《リフレクション・モデル》1点、本を積み重ねてバベルの塔のような構造を作る《テクトニック・モデル》1点)を中心に、小さな作品数点を展示。ピロティに階段を仮設し、階段を上ってメインフロアの床の開口部から顔が出せるようになるという。それによって床に置いた《アウト・オブ・ディスオーダー》(工業地帯モデル)を低い位置から見える。

 

 

展示プランを説明する鷲田めるろ

 

 

「日本館」をコンテクストに

 

今回の作家選定に関して鷲田は「日常的素材、見立て、繊細な手仕事といった岩崎の作品の特徴は日本的」としながら、「展示タイトルにはヴェネチアの地で作品を上からではなく下からも見ること、日本を陸からだけでなく海からも見ることの意味を込めた。『日本館』を訪れる多くの来場者に『日本的』な表現を、独自の方法で広島の歴史た日本の地方の状況とつないでいる岩崎の作品を楽しんでもらえたらと願う」と述べている。また作品のコンテクスト(文脈)についてはヴェネチアではなく「日本館」とし、今後作家とともに考えていきたいと語った。

 

また岩崎は「潮汐によって視点を変化させる厳島神社や、ヴェネチアの街のように、海抜0mから眺める風景を1階の天井中央に空いている穴から見たいと考え、プランを制作した。1つの展示を見上げる/見下ろすという異なる視点を作ることで、透視図法のように1つの視点による整合性のとれた空間ではなく、複眼的に展開される空間体験を生み出したい。何よりも楽しんでいただける展示ができれば」としている。

 

 

 

 

 

 

 

なお今回の指名コンペでは片岡真実(森美術館チーフ・キュレーター)と篠田太郎の「タイトル未定」、崔敬華(東京都現代美術館学芸員)と藤井光の「寄留者たち Soujourners」、保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)と杉戸洋の「(仮称)Hiroshi Sugito: Practice and Forces 杉戸洋 粒子とさまざまな力」の3案が候補に上がったが議論は紛糾せず、「最もイメージしやすく、美しい空間ができるだろう」という意見で満場一致となった(水沢勉国際展示事業委員会委員長談)という。

 

委員会のメンバーは水沢氏のほか、柏木博(武蔵野美術大学教授)、島敦彦(愛知県美術館館長)、長谷川祐子(東京都現代美術館チーフキュレーター)、港千尋(多摩美術大学教授)で構成されている。

 

 


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