[寄稿]インドネシアの創造的エネルギー 芸術文化と社会創造「ジャカルタ会議」報告:加藤種男

2016年04月08日 12:57 カテゴリ:最新のニュース

 

 

会議には3カ国から約60名が出席

 

企業メセナ協議会は、東南アジア地域でのメセナ活動を促進するため、インドネシアのジャカルタで、3月8日「芸術文化振興と社会創造における企業の役割」と題する国際会議を開催した。マレーシア、インドネシア、日本から企業関係者を中心に、芸術家、芸術文化振興機関、政府関係者を含めて約60名が出席し活発な議論が展開された。

 

日本だけではなく、インドネシア、マレーシアでも企業によるメセナ活動は実施されており、森美術館との連携のようにグローバルなネットワークも形成され始めている。その上で、社会課題の中で特に芸術文化への社会的投資を促進するためには何が必要かに議論が集中した。文化と経済の関係についての新しい考え方と枠組みづくりの提唱が求められた。この点については、会議にインドネシアの創造経済庁の次官が参加していることに象徴的なように、創造経済が重要だという議論がなされた。日本側は、まず資生堂から日本企業の経営の根幹にある「三方よし」の思想を紹介し、経済の新たなグローバル・スタンダードとする創造経済論を提言した。近年着目されているソーシャル・ソリューションが企業価値の原動力という考え方、さらには、株主資本主義ではなく、社会とともに企業経営を行うマルチ・ステークホルダー・プロセスによる公益資本主義を基軸とした経済観について議論された

 

そしてメセナ活動の現実的な側面では、企業と芸術文化の両方の言語を駆使し、つなぎ手となりうる人材の必要性と、文化振興プラットフォームの構築に向けたセクター間の連携をグローバルに推進することが確認された。

 

会議の登壇者。日本側は、企業メセナ協議会尾﨑元規理事長(右から2番目)、(株)資生堂 企業文化部長斉藤幸博氏(同4番目)、筆者(同6番目)

 

会議は、インドネシアの都市研究ルジャックセンター、マレーシアのMYPAをパートナーとして、あわせて国際交流基金の助成と支援をえており、5月には東京で、さらに8月にはマレーシアで継続して実施する予定である。その意味でも、芸術文化振興と社会創造のグローバル・ネットワークの継続発展に期待がもてた。

 

会議の翌日には、ジャカルタ市内の創造拠点をいくつか視察した。ジャカルタ・アーツカウンシルなど、いずれもハードとソフトの両方を兼ね備えており、創造性が極めて高いものだった。中でもギャラリーやダンススタジオ、劇場、レジデンス施設を備えた、サリハタ・アートセンターは、完全に民設民営で、新たな創造性の実験場として機能しており、世界的に見ても極めてレベルの高い創造拠点として感銘を受けた。

 

また、アーティスト・イニシアティブのスペースRuang Rupaは、大学などとも連携した調査活動に基づく若手芸術家の発掘支援を実施している。多様な背景を持つ団体と個人が集まり、資金や人的資源などをコモンリソースとして提供し、活用し、互いに発展しあう協働プラットフォームを形成している。有機的かつ持続的な連携がみごとに発揮されている。ジャカルタの創造的なエネルギーに強い刺激を受けた。

(企業メセナ協議会専務理事)

 


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