「第25回 林忠彦賞」に船尾修の写真集『フィリピン残留日本人』

2016年02月19日 18:33 カテゴリ:最新のニュース

 

 

第25回 林忠彦賞に写真家・登山家の船尾修(ふなお おさむ)氏の『フィリピン在留日本人』(冬青社刊)が選ばれた。

 

同賞は、戦後写真界に大きな足跡を残した写真家・林忠彦(1918~90)の多彩な業績を記念し、彼の故郷である山口県周南市が1991年に創設(公益財団法人 周南市文化振興財団主催)。林の精神を継承し、それを乗り越え未来を切り開く写真家の発掘を目的に、自薦、推薦から選考委員5名(細江英公委員長、大石芳野、笠原美智子、河野和典、有田順一の各氏)により選出される。

 

船尾氏は、1960年神戸市生まれで現在55歳。筑波大学在学中に探検部に所属し、卒業後は出版社に勤務するもクライミング(登山)にのめりこみ退職。アルバイトをしながら国内外の岩壁登攀を行い、30代でのアフリカ大陸放浪旅行の経験を通じて写真家の道へと進んだ。98年に『アフリカ 豊穣と混沌の大地(全2巻)』を出版、これが実質的なデビュー作となる。フリーランスの写真家・ライターとして「人間と風土」を大きなテーマに国内外でドキュメンタリー写真を撮影し、主に雑誌等で発表。2009年に写真集『カミサマホトケサマ』で第9回さがみはら写真新人奨励賞受賞、第18回林忠彦賞最終候補。

 

受賞作の『フィリピン残留日本人』は、戦争のために自らが日本人であること隠し、学校にも行けず、貧しい生活を送りながら戦後を生き抜いてきたフィリピンの残留日本人(日系2世)を数度にわたって取材し、モノクロフィルムによって記録したドキュメンタリー。氏は戦後70年にあたる2015年に本作を発表することで、日本でも未だほとんど知られていない彼らの存在が人々に目に留まり、日系人の国籍回復の願いが叶えられるかもしれないと、クラウドファウンディングにより資金を募って出版を実現した。

 

 

 

今年度の応募点数は108点。同作以外の最終候補には池本喜巳『近世店屋考』、古賀絵里子『一山』、清水哲朗『New Type』、百々武『草葉の陰で眠る獣』、豊里友行『オキナワンブルー 抗う海と集魂の唄』、古見きゅう『TRUK LAGOON トラック諸島 閉じ込められた記憶』、堀忠三『老農 北上高地の生 40年の記録』、村上仁一『雲隠れ温泉行』が選ばれている。

 

受賞記念展は、4月15日(金)~21日(木)東京・六本木の富士フイルムフォトサロン、5月6日(金)~15日(日)周南市美術博物館、11月27日(日)~12月12日(月)北海道・東川町文化ギャラリーにて開催。

 

【関連リンク】 林忠彦賞

 


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