[寄稿]大永平寺展:戸田浩之(福井県立美術館)

2015年10月08日 16:36 カテゴリ:最新のニュース

 

秘蔵の名宝102点で構成、過去最大規模の展覧会

 

曹洞宗の大本山永平寺は、中国から曹洞禅を伝えた開祖道元禅師(1200~53)により、鎌倉時代の寛元2年(1244)、越前国志比庄(しひのしょう)(福井県永平寺町)に創建されました。山深い境内には七堂伽藍が建ち並び、今も多くの雲水が修業に励む禅の修行道場として、770年以上の長い歴史と、数多くの貴重な文化財を今に伝えてきました。

 

本覧は、国宝・重要文化財や初公開作品を含む、秘蔵の名宝102点で構成される過去最大規模の展覧会です。坐禅を万人に勧めるために道元が撰述した、直筆の『普勧坐禅儀(ふかんざぜんぎ)』(国宝、10/18まで展示)や主著『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』、食事の大切さを説いた『典座教訓(てんぞきょうくん)』などは、道元の思想を知る貴重な史料です。また永平寺三世徹通義介(てっつうぎかい)により造られた、寺院の守護神「伽藍神(がらんじん)立像」は、躍動感あふれる鎌倉時代の彫刻で、永平寺草創期の数少ない作品といえます。また歴代住職の頂相(ちんそう)(肖像画)や、織田信長・豊臣秀吉らの文書からは、永平寺の歴史がうかがえます。

 

山内の建物を飾る絵画作品も、本展の見どころの一つです。「四季花鳥図」は江戸初期を代表する絵師狩野探幽の筆になる花鳥画の大作です。また曹洞宗の名僧で画も得意とした風外本高の「五百羅漢図」は、特徴ある人物描写が魅力的です。さらに永平寺と深いゆかりのある寺崎廣業や小室翠雲ら近代日本画家の作品に、現代日本画家の伊藤彬・田渕俊夫により奉納された襖絵も注目されます。

 

ほかにも今回の調査で新たに確認された奈良時代の写経(中聖武)や、鎌倉時代の木造羅漢像、初代福井藩主結城秀康の母長松院寄進になる辻が花裂などを使った袱紗(ふくさ)など、その内容は実に多彩です。

 

奈良から現代までの幅広い作品群は、何れも普段永平寺で見ることのできないものばかりです。これら貴重な品々を通じて、永平寺の歩んだ歴史と受け継がれた美を感じていただきたいと思います。(*会期中展示替えあり)

(福井県立美術館主任学芸員)

 

 

 

 

会場風景

 

会場風景

 

会場風景

 

【会期】2015年10月2日(金)~11月8日(日)

【会場】福井県立美術館(福井市文京3丁目16-1)

【TEL】0776-25-0452

【休館】10月13日(火)、19日(月)、26日(月)

【開館】9:00~17:00(入館は閉館30分前まで)

【料金】一般1,000円 大学・高校生700円 小中学生500円

【関連リンク】福井県立美術館

 

 

■学芸員によるギャラリートーク(要観覧券)

【日時】10月17日(土)、31日(土) 11::00から会場にて

 

■見どころ解説会(無料)

【日時】会期中の土・日・祝日の午前11時から講堂にて(10月3日(土)、17日(土)、31日(土)は除く)

 

 


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