【レポート】高松次郎の“謎”に迫る「高松次郎ミステリーズ」開幕

2014年12月01日 17:13 カテゴリ:最新のニュース

 

 

前衛美術家として、またハイレッド・センターの一員として世界的にも注目されているアーティスト・高松次郎(1936~98)。その全貌に迫る大規模回顧展が東京国立近代美術館で12月2日に開幕する。会場構成はトラフ建築設計事務所、グラフィック・デザインは菊地敦巳。

 

今展は高松の作品群を初期・中期・後期の3章に分け、同館キュレーターの桝田倫広、蔵屋美香、保坂健二郎の3氏がそれぞれを担当。第1章の『「点」、たとえば、一つの迷宮事件 1960-1963』ではハイレッド・センターの活動に並行して制作された初期のシリーズ、60年代初頭の「点」と「紐」を紹介。第2章の『標的は決してその姿を現さない 1964-1970s』は高松を代表する「影」シリーズから「立体」や「複合体」まで60年代半ばから70年代後半の作品を展覧する。また第3章『それは「絵画」ではなかった 1970s-1998』では70年代後半、高松が「絵画」へと回帰したのちの作品に焦点を当てる。

 

今展開催に当たり同館館長・加茂川氏は会見で「高松次郎の広大で奥深い思想の世界に身をゆだねてもらい、そこに潜んでいる謎を楽しんでもらいたい。今展では3名のキュレーターがそれぞれのパートの“ミステリーハンター”として来館者の案内役をしていく。3名のキュレーターというのは珍しいが、高松の世界がそれだけ奥深いということ。多くの方に楽しんでもらいたい」と挨拶。

 

同館美術課長・蔵屋氏は同展について「高松次郎の言葉と作品から高松次郎が考えていたこと、作品に込められた意図というのを一つ一つ読み解き、高松と同世代の方から全く知らない若い世代まで、分かりやすく伝えようと考えた」と開催の経緯を説明。「高松次郎は60年代当時から東京国立近代美術館と所縁のある作家だった。最初の出品は1961年のグループ展「現代美術の実験展」。そして70年の「1970年8月:現代美術の一断面」展では今展でも展示している《光と影》を出品している。今回、同作は当時展示していたのと近い場所に、約45年ぶりに展示している。高松次郎を直接知らない我々の世代が、今の視点を以て次の世代に伝えていくためにはどんな視点があるか、という工夫を凝らした」と語った。

 

 

今展では会場に高松の作品への理解を助けるための3つの仕掛けが設置。まず会場に入って目に飛び込んでくるのは高松の代名詞ともいえる「影」シリーズの1つ《No.273(影)》だが、メイン会場へと続く通路では「影」の楽しみを体験できる「影ラボ」(会場内で唯一写真撮影可)が設置。壁や天井に設置された光源が、通路を通る人々の影を投影し、「影」シリーズを追体験することができる。

 

 

また高松のアトリエの大きさを再現した「ステージ」からは壁のない会場が一望。保坂氏は「それぞれの章には密接なつながりがある。そのつながりを直感的に体験してもらえる場所として用意した」としている。(ステージ上におかれたクッションは《スケッチブック40》に描かれた作品などがモチーフ)

 

 

会場出口となるエントランスホールには高松が映った巨大なパネルとともにサングラスが用意され、高松になりきって写真を撮るというコーナーも設置。サングラスを着けることで、高松が常にサングラスをかけていた意味に想いを巡らせることができる。

 

 

今展の特徴として、オブジェや彫刻、絵画のほかに150点におよぶドローイングの展示が挙げられる。このことについて蔵屋氏は「高松は実際にモノを作る前に膨大なことを考える作家。そこから抽出されたほんの一部分が実際の作品となっている。考えを深めていった途中の過程を生々しく見せるドローイングが高松の理解にとってとても重要」としている。

 

また今展は海外発信を重視し、会場解説やカタログを全て日英のバイリンガル化。「海外で評価が高まっているにも関わらず、高松の言葉を英語で読むことが難しいために、海外の研究が必ずしも高松を正確に紹介しているわけではない。そこで私たちの方から海外へ向かって発信していくということを考えた」と今展における同館の積極的な姿勢を垣間見せた。

 

今展は作品と共に「言葉」が数多く展覧されているのも特徴の1つ。高松次郎という複雑で、謎多き作家を読み解くうえで重要な意味を持つ数々の「言葉」。時間に余裕を持って展覧会にのぞみたい。

(取材:橋爪勇介)

 

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【会期】12月2日(火)~2015年3月1日(日)

【会場】東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3-1) TEL 03-5777-8600

【休館】月曜日(ただし1月12日は開館)、12月28日(日)~1月1日(木)、1月13日(火)

【開館】10:00-17:00(金曜は20:00まで、入館はそれぞれ閉館30分前まで)

【料金】一般900円 大学生500円 高校生以下および18歳未満無料

【関連リンク】東京国立近代美術館

 

 

■講演会「高松次郎を知る人々(仮題)」

【日時】12月6日(土) 14:00~15:30(開場は開演30分前)

【出演】高島直之(美術評論家、武蔵野美術大学教授)、堀浩哉(美術家、多摩美術大学教授)

【会場】東京国立近代美術館 地下1階講堂

※聴講無料、申込不要、先着140名

 

■座談会「展覧会をつくる」

【日時】12月20日(土) 14:00-15:30(開場は開演30分前)

【出演】鈴野浩一・禿真哉(トラフ建築設計事務所)、菊地敦己 聞き手:保坂健二朗

【会場】東京国立近代美術館 地下1階講堂

※聴講無料、申込不要、先着140名

 

■高松次郎バースデー記念ミステリーイベント

【日時】2015年2月20日(金) 18:00~19:30

※詳細は後日発表

 


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