【入場者数レポート】 2014年前半の主な展覧会の話題から

2014年07月03日 18:04 カテゴリ:最新のニュース

 

モネ展30万人超え キトラから院展と日本美術の底力

 「連携」で企画力も集客力もアップ

 

全国の主な美術館や展覧会を主催する新聞社やテレビ局を対象に、2014年1~6月に開催(2013年12月に開始、あるいは会期途中の展覧会も含む)された大型展覧会の入場者数調査を行った。今期は「栄西と建仁寺」を始め、日本美術の展覧会の充実ぶりが目立った。企画・運営面に目を移すと、浮かび上がるキーワードは「連携」。コレクションを有効活用したり、共通チケットを発行したり、広報などで協働するなど、各館が持つコレクションや人材、ノウハウを分け合うのが今日のトレンドかもしれない。

 

調査した展覧会の中で唯一入場者数が30万人を超えた「モネ、風景をみる眼」(国立西洋美術館)は、ポーラ美術館(2013年7月13日~11月24日開催)との共同企画。国内有数のモネ・コレクションを誇る2館が連携、国立美術館と私立美術館との共同企画は国内初でこの面でも画期的だった。他作家の作品も交えつつ関連作品を並べて展示するなど、展示方法にも工夫が見られた。

 

アンディ・ウォーホル展」は展望台入場者数を含まず同展単独の数字だが、日本では約20年ぶりの大回顧展とあって25万人以上が訪れた。一方約10年ぶりの日本開催となった「バルテュス展」は、画家没後初の、かつ最大規模の大回顧展。アトリエの再現、篠山紀信撮影の写真も興味深かった。生前、展示会場の採光にこだわっていたバルテュスも太鼓判を押した京都市美術館に巡回する(7月5日~9月7日)。

 

ザ・ビューティフル」、「ラファエル前派」と、19世紀イギリス美術を扱う展覧会が偶然にも都心で同時期に開催されたが、広報のタイアップを図るなど連携し、いずれも10万人以上を呼び込んだ。

 

日本美術では、俵屋宗達「風神雷神図屏風」(国宝)が出品された「栄西と建仁寺」、浮世絵の「国際選抜」を謳った「大浮世絵展」が目立つ。後者は巡回先の名古屋市博物館と山口県立美術館(7月13日まで開催)を合わせ約31万人と健闘。なお、「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」も名古屋ボストン美術館と神戸市立博物館でそれぞれ約10万人を動員した。

 

東京国立博物館と東京都美術館がコラボレーションした特別プロジェクト「日本美術の祭典」。共通前売り券の売れ行きも好調で、「クリーブランド美術館展」、「人間国宝展」、「世紀の日本画」ともに10万人以上を達成。「世紀の日本画」は前後期で展示作品を総入れ替えし、狩野芳崖、横山大観から現在活躍中の作家まで院展画家のオールスターが勢揃いする、質量ともに豪華な内容だった。

 

一日当たりの入場者数でみると、「栄西と建仁寺」(5145人)、「木梨憲武展×20years」(4774人、金沢21世紀美術館、盛岡市民文化ホール、兵庫県立美術館に巡回)、「キトラ古墳壁画」(4771人)がトップ3。「キトラ古墳壁画」は壁画が奈良県・明日香村外で初公開されるのに加え、会期がゴールデンウィークと重なり入場規制される日もあり、会期末は夜間開館でしのぐほどの混雑ぶりだった。

 

表外で特記したいのは、練馬区立美術館が開催した「野口哲哉武者分類図鑑」(7月27日までアサヒビール大山崎山荘美術館に巡回中)。会期初日は大雪で休館するアクシデントに見舞われながら、開催日数43日で1万9000人以上。入場者は、30代アーティストが生む虚実織りなす世界に浸り、精緻な鎧武者像と野口本人によるウィットに富むキャプションを食い入るように見つめていた。また、メディア芸術の総合フェスティバル・「第17回 文化庁メディア芸術祭」(国立新美術館)は、入場無料で最先端のアートを鑑賞できるとあって一日当たり3540人が入場。その国立新美術館で昨年後半約12万人を集めた「アンドレアス・グルスキー展」は、大阪(国立国際美術館)でも7万人以上を動員、作家の日本での知名度をさらに広めたようだ。

 

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