【レポート】 「京博が新しくなります」 開かれる

2014年02月17日 19:08 カテゴリ:最新のニュース

 

佐々木館長+井浦新氏との特別対談も―目玉は「平成知新館」

 

独立行政法人・京都国立博物館(京都市東山区、佐々木丞平館長)は、現在新平常展示館の建替工事のため4月の特別展開催まで全館休館中だが、1月25日、京都テルサホールにおいて特別シンポジウム「京博が新しくなります」を開催した。佐々木丞平館長の基調講演「京博の過去・現在・未来」はじめ4つの充実した内容の講演と京博文化大使を務めている俳優・井浦新氏と同館長との特別対談などのプログラムが組まれた。今秋に開館することになる、ハイテク装備の「平成新館(へいせいちしんかん)」の最新情報など、訪れた多くの聴衆に新しくなる京博を強くアピールした。

 

井浦新氏(右端)と佐々木丞平氏(中)による特別対談イベント、左端はコーディネーター・村上隆氏(同副館長)

昨年、実施された京博の新平常展示館(新館)と特別展示館(本館)の名称コンテストには全国から多数の応募が寄せられ、厳正な選考の結果、新館を「平成知新館」、本館を「明治古都館」とすることになった。

 

京博の新しい“顔”となる「平成知新館」開館は本年9月13日(土)である。同館は東京国立博物館法隆寺館、ニューヨーク近代美術館新館を手掛けた建築家・谷口吉生氏の設計。直線を基本に京の町屋のコンセプトを取り入れた展示空間では、収蔵品を中心に京文化の神髄をゆっくり楽しんでもらえるという。開放的なエントランスホールには来館者をやさしく包んでくれる陽光が降りそそぐ。展示室全体を守る免震構造、最新の映像設備を誇る講堂、庭を眺望できるレストランなどこれまでにない魅力がいっぱいだ。

 

佐々木館長によると「新館は当初今春にオープンする予定でしたが、作品のよりよい保存・展示環境を確保するためどうしても一夏の期間をおく必要があり、観覧者のためにも良いとのことで今秋の開館になった。独立行政法人組織として十数年活動してきた理由と成果は十分あった訳ですが、この度のリニューアルをまた大きなターニングポイントにしてより多くの方々に来ていただけるよう邁進していきたい」と説明する。

 

今秋オープンする「平成知新館」について説明する山川曉・京博教育室長

今秋オープンする「平成知新館」について説明する山川曉・京博教育室長

京博でのこれからの展覧会は「南山城の古寺巡礼」(平成26年4月22日~6月15日)、「修理完成記念 国宝 鳥獣戯画と高山寺」(同10月7日~11月24日)などの特別展を開催予定。「平成知新館」オープンまで平成25年12月~4月21日と6月16日~9月12日の間、平常展を休止する。

 

講演1として大原嘉豊・主任研究員による「国宝 鳥獣戯画 その歴史と作者」が行われた。(講師、演題がやむを得ない事情により急きょ変更となった)

 

京博所蔵の「探幽縮図」に写された江戸時代初期の姿などから、絵巻のたどってきた歴史や受難をふりかえり、鳥羽僧正覚猷筆という作者伝承から近年問題になっている絵仏師か宮廷画家かという作家特定の問題について展望したもので一般の日本美術ファンにも分かる刺激的な話題であった。

 

更に永島明子・主任研究員による「京都から世界へ 黄金と漆の宝箱」、山川曉・教育室長による「東アジア染織の宝蔵・日本」、村上隆・学芸部長による「美を伝えるために 文化財修理の世界」がそれぞれ興味深い研究成果を語った。

 

特別対談イベントにはNHKのEテレ「日曜美術館」司会を務めている俳優・井浦新氏が登場。以前からよく美術館博物館を訪ねるという井浦氏が、聴衆からの質問「美術館と博物館との違いはどこ?」など質問を佐々木館長に尋ねるQ&Aコーナーもあり、若い女性ファンも多く、シンポジウムの反応も上々だった。

 

この日、コーディネーターを務めた村上・学芸部長は「普段のこれだけ丁寧な研究活動をももっと多くの方に知って頂くためにも広く打って出ようという思いです。我々に足りないのは館長も話したようにPR活動ではないか、との考えを今回のシンポで訴えたかった」と語った。

 

「新美術新聞」2014年2月11日号(第1336号)3面より

 


関連記事

その他の記事