【ニュース】 「東アジア共生会議2013」開かれる

2013年12月24日 19:07 カテゴリ:最新のニュース

 

シンポ&パフォーマンス 各国文化関係者のネットワーク強化へ

 

12月7日(土)・8日(日)、東アジア諸国の文化人、芸術家、学術経験者らが一堂に会し、文化庁主催によるイベント「文化庁国際文化フェスティバル 東アジア共生会議2013」が京都市の京都劇場(JR京都駅ビル内)で開かれた。東アジア地域は領海等を巡って緊張状態にあるが、いま「クールジャパン」は世界から注目されている。文化の多様性や東アジア共生に向けた日本文化の発信の可能性について熱く議論が交わされた。

 

開会挨拶する青柳正規文化庁長官

開会挨拶する青柳正規文化庁長官

青柳正規・文化庁長官による開会挨拶

「東アジア共生会議は東アジア各国が共生する未来に向けた理念を明らかにするため、東アジア諸国の文化人・芸術家が一堂に会し東アジア諸国の関係者同士のネットワーク強化を図るとともに、世界全体の共生にも貢献する東アジアからのメッセージを世界に向け発信することを目的にしています。それぞれ固有の文化を所有する東アジア各国は古くから互いに交流を図ることで互いの文化を受容し、発展してきました。このような東アジア地域で共生を目指して多様な文化を尊重しながら新たら視点から東アジアの新しい共存の姿を追求し、それを世界に対し発信していくことは世界全体にとっても大変有意義なことです。

第3回目の開催となる本年は伝統文化からポップカルチャーまで幅広い文化の発信拠点である京都市において青木保・国立新美術館長を総合議長に2つのセッションを開催します。初日は青木館長をモデレータに仰ぎ、『世界の中の日本文化~ジャポニスムそしてクールジャパン~』をテーマに、2日目は南條史生・森美術館長をモデレータに『都市とアート』をテーマにシンポジウムとパフォーマンスを実施します。」(両モデレータとも本紙「通信アジア」レギュラー執筆者)

 

「世界の中の日本文化~ジャポニスムそしてクールジャパン~」(12月7日)、総合議長・モデレータ:青木保国立新美術館長(左端)とパネリスト

「世界の中の日本文化~ジャポニスムそしてクールジャパン~」(12月7日)、総合議長・モデレータ:青木保国立新美術館長(左端)とパネリスト

 

第1日目シンポジウムの参加パネリストはウィスット・ポンニミット氏(漫画家、タイ)、滕軍氏(北京大学教授、中国)、トマ・シルデ氏(ジャパン・エキスポ副代表、フランス)、ポン・ジュノ氏(映画監督、韓国)、マーティ・フリードマン氏(ギタリスト、アメリカ)、増田セバスチャン氏(アートディレクター、日本)、深井晃子氏(キュレーター、日本)の7人。日本の漫画から大きな影響を受けたというポンニミット氏、日本で音楽プロデューサーとして活躍するフリードマン氏らは日本語で発言。世界中で「クールジャパン」催事を展開するシルデ氏、日本で茶道を学んだ滕軍氏、日本文化をハリウッドまで発展させたポン・ジュノ氏。

 

19世紀パリ万博をきっかけに欧州の芸術に大きな影響を与えた「ジャポニスム」は1世紀以上の時を経た今、世界の文化の影響を受け育まれた「クールジャパン」として東アジアや世界から注目を集めている。文化人類学の幅広い立場から青木氏はモデレータとして要点を押さえ、参加者の率直なクールジャパン評価と助言を引き出した。文化の多様性、東アジア共生に向けた日本文化発信の可能性がうかがえる議論が展開された初日となった。

 

「都市とアート」(12月8日)、モデレータ:南條史生森美術館長(左端)とパネリスト

「都市とアート」(12月8日)、モデレータ:南條史生森美術館長(左端)とパネリスト

 

2日目のパネリストは、世界で活躍する蔡國強氏(美術家、中国)、建築家の伊東豊雄氏(くまもとアートポリスコミッショナー、日本)、南北朝鮮非武装地帯での企画で一躍世界に知られたキム・ソンジョン氏(キュレーター、韓国)、渋谷慶一郎氏(音楽家、日本)、国内外で精力的に活動する名和晃平氏(彫刻家、日本)、オン・ケン・セン氏(シンガポール芸術祭総合監督、シンガポール)の6人。

 

いずれも国境を越えて活躍する芸術家やキュレーターたちだ。本セッションでは、アートと都市の新たな関係性について議論が交わされた。まとめとして南條氏は「アートとは何か?の議論になると際限がない。創造性とは物を創ることなのか、ものの見方なのか。文化は国境を越えるということを皆さんで考えていただきたい。国境は大事で守ることがよく議論されますが、民族国家の概念はもう破綻している。むしろ文化面をみると、ますます国境を越えて交流が深まっている。アジアは今凄く発展しているのですが、文化もそうなると思います。ご出席の方々も国を超えて活躍されている。過去にだけ目を向けるのでなく、未来にも目を向けたいと思います」と総括した。

「新美術新聞」2014年1月1・11日合併号(第1332号)3面より

 

 


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