【レポート】 草間彌生氏、総理官邸を表敬訪問

2013年10月02日 15:36 カテゴリ:最新のニュース

 

「ハイカルチャーの日本美術 世界に発信を!」

草間彌生氏 総理官邸に安倍首相を表敬訪問―青柳文化庁長官、髙橋龍太郎、本庄俊男の各氏と

 

総理官邸にて、右から青柳文化庁長官、安部首相、草間彌生氏、髙橋龍太郎氏、本庄俊男氏

総理官邸にて、右から青柳文化庁長官、安部首相、草間彌生氏、髙橋龍太郎氏、本庄俊男氏

 

9月18日、青柳正規・文化庁長官と画家・彫刻家の草間彌生氏、現代アートコレクター・高橋龍太郎氏、彩鳳堂画廊代表・本庄俊男氏は総理大臣官邸に安倍晋三首相を表敬訪問した。今夏開かれた「ワンダフルマイアート 高橋コレクションの作家たち展」(河口湖町美術館)を訪れてくれた首相へのお礼だが、極めて特別な招待である。「ハイカルチャーの日本美術を世界に発信したい」とする安倍首相の思い、芸術文化への理解は確固足るものだ。背景にはクールジャパン戦略があった。

 

著名な現代美術家で話題の草間氏らの官邸訪問の公式発表は、前日夕刻まで明らかにされなかった。首相には内外の要人からの分刻みの訪問スケジュール。しかし、超過密日程にもかかわらず、首相は文化功労者でもある草間氏らと18日午前11時から面会した。報道陣には5分間の公開取材だったが、その後も歓談は様々な話題で20分余りに及んだ。

 

首相が草間氏に「先般、本庄さんにご案内頂いて河口湖美術館で作品を拝見し、感銘を受けました」と話すと、草間氏は驚いた表情で、「ありがとうございます」と答えた。高橋氏は「日本の伝統美術は世界的にも素晴らしいものですが、現代美術も大変評価が高い。こちらも海外へのアピールに力添えを」と語った。首相は「サブカルチャーは世界に広まっていますが、これからはハイカルチャーの日本の現代美術も強く世界に発信していきたい。クールジャパンを掲げていますから」と応じた。草間さんは自らデザインしたティーセット(ポットとカップ6客)を首相にプレゼントした。

 

河口湖町立美術館「ワンダフルマイアート 高橋コレクションの作家たち」展で、鑑賞する安倍首相(右)と説明する本庄氏=8月19日

河口湖町立美術館「ワンダフルマイアート 高橋コレクションの作家たち」展で、鑑賞する安倍首相(右)と説明する本庄氏=8月19日

今回の官邸訪問では、彩鳳堂画廊の本庄氏が大きな役割を果たした。同氏によれば安倍政権成立後、アベノミクスと共にクールジャパンを含む文化芸術面の政策重視が明確に打ち出された。民だけでなく官による芸術支援の実現の可能性がでてきたのだ。

 

もともと本庄氏は広く日本美術全般に関心を持ち、業界の先頭を切って長年さまざまな企画展を画廊、百貨店、美術館等で開いてきた。一方で内外の現代アートにもきわめて詳しい。近年は、閉塞し続ける美術業界で「潮目は変わってきている」と分析、国際的にも通用する若手現代作家の発掘にも力を入れてきた。そうした流れの中で、三潴末雄・ミヅマアートギャラリー代表と協力して企画開催したのが、「高橋コレクション展」(河口湖美術館、4月14日~9月16日)である。

 

週のうち半分は山梨県に居住する本庄氏が地元の河口湖美術館に長年働きかけた結果、ようやく実現した。

 

今年春頃からは、河口湖近くの同県鳴沢村に別荘を構える首相に近い関係者に機会をとらえて同展の鑑賞を間接的に呼び掛けていたものだ。

 

夏休み中の時間を割いて美術館を訪れた安倍首相は1時間以上も館に留まり熱心に各作品を観賞し、作品のレベルと迫力に今までとは違うと、かなり興味を示した様子だった。その折り、本庄氏は「日本では戦後、文化芸術の“政府発信”はほとんどなされていない。ですが近年、韓国、中国、台湾、シンガポール、香港は国を挙げて文化活動を支援しています。文化は国のイメージに大きな影響があります。芸術文化に魅力があれば国の魅力も増しますから」と強く訴えたという。「総理は物凄く熱心に聞いていた。だから今回我々と会ってくれたのではないでしょうか」と語った。

 

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 「新美術新聞」2013年10月1日号(1324号) 3面より

 


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