【レポート】 河口湖美術館 「ワンダフル・マイ・アート―高橋コレクションの作家たち」展開幕

2013年05月07日 15:18 カテゴリ:最新のニュース

 

クオリティー高い日本の現代アート 海外で紹介展示めざす

高橋龍太郎氏の「多くの人に見てほしい」思い―関係者の努力で3年越しに実現

 

山梨県・富士河口湖町の河口湖美術館で「ワンダフル・マイ・アート―高橋コレクションの作家たち」展が開催されている。日本有数の現代美術コレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏の2000点に及ぶ中から選りすぐった23点の作品。4月14日、高橋氏や出品作家たち、関係者らを迎えて開幕記念式典が行われた。今夏にも世界文化遺産に登録される見通しの富士山、そしてクオリティー高い日本の現代アート、ともに富士河口湖町がいま発信源だ。

 

 

名知聡子の大作「幸福と絶望」をバックに、企画展実現に尽力した三瀦末雄、青柳正規、高橋龍太郎、本庄俊男の各氏(右から)

名知聡子の大作「幸福と絶望」をバックに、企画展実現に尽力した三瀦末雄、青柳正規、高橋龍太郎、本庄俊男の各氏(右から)

高橋コレクションは、90年代の日本の現代アートを中心に国内外で活躍する草間彌生、会田誠、奈良美智らの初期の代表作、若い作家達の作品等、その数2000点、質量ともに日本を代表し、今なお拡大中である。08年~10年にかけ「ネオテニー・ジャパン―高橋コレクション」を全国7箇所の美術館で開催、各地の現代アート展でも所蔵作品の貸出を行い、日本の現代アート発展を支援し続けている。

 

今展は、高橋コレクションと深く長い関わりを持つ三潴末雄・ミヅマアートギャラリー代表、河口湖町と縁の深い本庄俊男・彩鳳堂画廊代表、日本の現代アートを理解し積極的に支援する青柳正規・国立西洋美術館長ら関係者が3年前から河口湖町と一大企画展として開催の可能性を探り、このほどようやく実現に至ったものだ。

 

来賓として招かれた青柳氏は「展覧会を拝見して大変驚きました。欧米から帰国したばかりなのですが、現代美術のこれほど素晴らしいレベルの内容を個人で2千点も収集されたことに敬意を表します。いま世界的に日本のグタイ(具体)、もの派とかが見直されています。何故か?草間彌生さんもそうですが、その大きな理由の一つはクオリティーが高いことで世界的に日本の現代美術が見直されている訳です。今日、ここにある作品をみてもつくづく納得できる作品ばかりです。私は『高橋コレクション』を海外に紹介展示し、具体・もの派だけでなく、日本の現代アートのよさを世界で大きく認知してもらうお手伝いをしたいと思います。雪の富士山、満開の桜に河口湖、立派な美術館施設、こういったシチュエーションで観賞できるのはなかなかありません。沢山の方々が来られてもきっと満足するでしょう」と挨拶した。

 

展覧会場にて(右は濱田樹里の「焔にたつ華」)

展覧会場にて(右は濱田樹里の「焔にたつ華」)

それに応えて高橋龍太郎氏は「青柳先生が海外で紹介展示を、とおっしゃられたので胸が一杯です。是非持って行けたらと願っています。国の協力も期待します。コレクターは孤独な作業なのですが、こうして展示されますと十分満足感が得られます。世界の人に個人のコレクションというより日本の現代の若者の才能を評価してもらえれば、少し閉塞感に満ちたこの国の未来も明るいような気がします。この3年くらい高橋コレクションとしての公開展示が無く暗いニュースが続いて中国・韓国の取組と比べ日本のアートの先はどうなるのかと気になっていましたが、力強いお言葉をいただいたのでこれからも前向きに進みたいと思います」と語った。

 

「ワンダフル・マイ・アート―高橋コレクションの作家たち」

出品作家:安藤正子、池田光弘、大畑伸太郎、加藤泉、加藤美佳、草間彌生、桑久保徹、鴻池朋子、五木田智央、近藤亜樹、千葉正也、天明屋尚、戸田沙也加、名知聡子、奈良美智、西尾康之、濱田樹里、町田久美、山口晃(敬称略)

 

【会期】 2013年4月14日(日)~9月16日(月・祝)

【会場】 河口湖美術館(山梨県南都留郡富士河口湖町河口3170)☎0555―73―8666

【休館】 火曜、6~8月は無休

【開館時間】 9:30~17:30(入館は16:30まで)

【料金】 大人・大学生800円 高校生・中学生500円

【関連リンク】 河口湖美術館

 

「新美術新聞」2013年5月1・11日号(第1311号)3面より

 

 


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