【桑沢デザイン研究所】CSP2―手法の触感―

2014年11月19日 08:35 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

手法と表現の関係に着目

 

新たな美術の動向へ向けた展示とシンポジウムの開催、そしてその記録化を継続的に行うことにより、それが美術と教育の場への新たな契機となり反映となることを目指し2013年に始まったCSP(Creative Spiral Project)。その第2回展が桑沢デザイン研究所で開催される。

 

今展では作品制作における手法と表現の関係に注目し、今村洋平、榎本裕一、岡本真希、染谷悠子、ヒグラシユウイチ、山本桂輔の6名の作家を選出。いずれの作家も、キャリアの形成過程においては絵画/版画/彫刻の手法を学びながらも、それらの手法に表現を委ねるのではなく、自らの表現のために転用/カスタマイズすることで斬新な作品を生み出している。

 

 

参加作家

 

今村洋平

1978年福岡県生まれ。2000年よりシルクスクリーン印刷によってインクを堆績させる作品を制作。自宅の卓上で細かな作業の繰り返しで完成される多面体の星形シリーズを制作する一方で、数千回もインクを積み重ね作り上げるミニチュアの山の作品や、実際に山の中に身を置きより研ぎ澄まされた感覚の中での油絵制作などにも取り組む。今展では、そのシルクスクリーン印刷によってインクを堆積させた山のシリーズと、立体の表面にシルクスクリーンの刷りを施した多面体の星形シリーズが展示される予定。

 

今村洋平 《2》 2013 Courtesy of KAYOKOYUKI

 

榎本裕一

1974年東京都生まれ。丸か、四角くても極めて薄い支持体か、あるいは壁面を支持体として使用。。素材も木・金属・樹脂など多岐にわたる。必ず具体的なモチーフがあり、可能な限り自然光の下で観察し混ぜ合わせた絵の具を時に気が遠くなる程何層にも塗り重ねては磨いていく。挽物轆轤、漆芸といった技術も習得した榎本は、支持体の物体としての側面を不要なものと感じ、絵の具を支持体から自立させる作品創りに取り組んでいる。今展ではその支持体から絵具を剥がした絵具のみで自立する作品シリーズ「塗膜の花」を出品。

 

榎本裕一《塗膜の花》 2007 水性塗料、ウレタン塗料

 

岡本真希

1983年兵庫県生まれ。大学で彫刻を学んだあと、大学院でコンテンポラリージュエリーとテーブルウェアを学ぶ為スウェーデンへ渡った岡本は、以来ストックホルムに居住しながら国内外での幅広い個展・グループ展などに参加、6人のアーティストとアトリエ兼ショップギャラリーLODを共同運営しながらグループ展・イベントなども開催。身近に存在するモノとコトの常識を少しねじり、常に使い手の存在を意識した作品作りを心がけている岡本。CSP2展ではコップやスプーン、フォークなど日常手にするものをテーマにした作品と写真を通して、その在るべき姿をどこまで広げられるのかという命題に挑む。

 

岡本真希 《The Spoon》 2011-2014 ニッケルシルバー(洋白)、銀メッキ加工

 

染谷悠子

1980年千葉葉県生まれ。高校時代から油絵の素地を学んだ染谷は大学、大学院では版画コースを専攻、版技法を使用した独自の手法を探求してきた。透かせばしっかりと見通せる程薄く漉かれた和紙を重ね合わせることで、物理的に色を混ぜること無く豊かな色の層を生み出す染谷。モチーフの多くである花や鳥、樹木、動物、その花びらや羽根の一つ一つのラインは幾度もの下書きを経て切り出され、舞台の上で生き生きとストーリーを語りはじめる。今展では近年用い始めた型を使用した手法で制作される作品が出展される予定。

 

染谷悠子《清潔な沈黙》 2014 和紙、墨、リトグラフインク、⽔水彩、鉛筆
©Yuko Someya Courtesy of Tomio Koyama
Photo by Kenji Takahashi

 

ヒグラシユウイチ

1971年千葉県生まれ。大学時代から石彫を始めたヒグラシは2007年より岩塩による作品制作を開始。当初は石と同じ抽象彫刻を制作していましたが、2012年からは「水に溶ける」という素材の弱点を長所ととらえ「溶けて消えてしまう塩でつくる、この世から無くなったほうがよいモノ」というコンセプトのもと、武器をモチーフとした「SALT ARMS」を発表している。本展では「世界最小の大量破壊兵器」とも称される「SALT ARMS AK-47」が展示される。

 

ヒグラシユウイチ《SALT ARMS-Mk-Ⅱ Grenade‒No.3》2013 岩塩

 

山本桂輔

1979年東京都生まれ。高校から彫刻の勉強をしていた山本は、木彫に加えてペインティングやドローイングや写真なども制作するようになり、彫刻と絵画という2つの領域で作家活動を続けている。近年は郷土玩具やアウトサイダーアート、近所のおじさんがつくる不思議なオブジェなど、単純ながら摩訶不思議なマイナーな感覚や身近な物、八百万の神や自然に対しての意識などをインスピレーションに制作を続ける山本は本展にて、年代も作り方も、考え方も様々で奇妙な彫刻群の展示を展開する予定。

 

山本桂輔《無題》 2009 キャンバスに油彩
Courtesy of Tomio Koyama

 

【会期】11月23日(日・祝)~12月2日(火)

【会場】桑沢デザイン研究所1階(東京都渋谷区神南1-4-17)

【休館】無休

【開館】12:00~20:00(23日のみ16:00~20:00)

【料金】無料

【関連リンク】Creative Spiral Project

 

■シンポジウム

【日時】11月28日(金) 18:30~20:30

【登壇】今村洋平、染谷悠子、ヒグラシユウイチ、山本桂輔(五十音順)

【モデレーター】沢山遼

 

■レセプション

【日時】11月23日(日・祝) 18:00~20:00

 


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