【日本橋】 THE・女流展 vol.2

2013年02月08日 15:56 カテゴリ:最新の展覧会情報

 

池口史子「屋根裏部屋」130.3×97.0cm 油彩、キャンバス

11名の星座のごときグループ・ショウ

本江邦夫(多摩美術大学教授)

 

 

■出品作家■

池口史子、金山桂子、岸田夏子、北久美子、佐々木里加、島田鮎子、中村智恵美、福島瑞穂、福田美蘭、本田希枝、村山きおえ (50音順・敬称略)

 

 

一去年のいつだったか、日本橋三越を通りかかったら「THE・女流展」の開催中で、画家たちが一列に並んで座り、順番にお話をされているではないか。金山桂子さん、池口史子さん、福島瑞穂さんなど見知っている方々もいらっしゃる。これは面白い、それぞれに挨拶もしたい―私は迂闊にもしばらくそこに立ち止まることにしたのである。迂闊というのは、福島さんのお話になったら、これが延々と続き、次の予定があった私は展示を全部見ることもできず、途中で立ち去らざるをえなかったからである。

 

 

島田鮎子「ふたつの器とひとつの枝」72.7×90.9cm 油彩、キャンバス

THE・女流展はいわゆるグループ・ショウだが、「十果会」(独立)、「個の地平」(国画)といった各団体展の顔見世興行的なそれではない。声高な主張があるわけではないが、各自の画風の有機的な結びつきを感じさせ、それなりに良くまとまっている。そもそもグループ・ショウとは何なのか?私はその最も美しいイメージを星座のそれに見ている。それぞれに孤立した星=画家が虚空=社会を背に、単独ではなしえない、意味のある形つまり形象を描き出す―これこそがグループ・ショウの本道であろう。

 

 

 

金山桂子「祈り」162.1×130.3cm 油彩、キャンバス

金山桂子の最大の魅力は、ガラス容器の現象学的(?)再現に託された「存在」への徹底的な眼差しにある。池口史子の画業はともに異国の、外部(風景)と内部(室内)に大別されるが、その強靭な線の構築力は瞠目すべきものだ。これを男勝り(失礼!)というなら、島田鮎子の幾何学的な静物はどこまでもたおやかである。

 

 

福島瑞穂は油絵具=肉体という西欧の定式を自家薬籠中のものとし、醜悪そのものでしかない肉塊の愛欲図を逆手にとって、「実存」の美を提示してきた稀有な画家である。これに対して、本田希枝に見られる「顔」の直視には、この人ならではのヒューマニズムの支えがある。そんな理屈はどうでもいい、と言わんばかりなのは自然の鮮烈なヴィジョンにこだわる北久美子。自然だって?そんなもの全部描いてみせる、とピカソばりの豪腕を誇るのが福田美蘭。でも結局は脳がすべてかも―佐々木里加はコンピュータのごときそれに没入する。青臭いなあ、私たちがすでに自然なのに―岸田夏子の描くそれはどこまでも等質である。

 

 

福島瑞穂「深淵」227.3×162.1cm 油彩、キャンバス

グループ・ショウの秘められた魅力は、見知った画家によって見知らぬ画家を知ることである。今回であれば村山きおえと中村智恵美が私にとって知らない画家だ。画像はちゃんと調べそれぞれに興味深いが、冒頭の理由で前回は作品を実見していないので軽率な発言は差し控えたい。

 

 

【会期】 2013年2月13日(水)~18日(月)

【会場】 日本橋三越本店本館6階美術特選画廊(東京都中央区日本橋室町1-4-1)☎03-3241-3311

【休廊】 会期中無休 【料金】 無料

【関連リンク】 三越の美術-三越美術空間

 

ギャラリートーク

2013年2月16日(土) 14:00~

【会場】 同美術特選画廊

 

「新美術新聞」2013年2月1日号(第1302号)1面より

 


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