[フェイス21世紀]:河本 真里〈日本画家〉

2021年06月26日 10:00 カテゴリ:コラム

 

”ほっと一息、癒しの空間へ”

 

アトリエにて

アトリエにて、愛鳥と

 

春の木漏れ日のような温もりや静けさ、柔和な光――

 

日本美術院院友・河本真里の作品は、心安らぐひと時をもたらしてくれる。2016年の院展で奨励賞、更には最年少での天心記念茨城賞を受賞した期待の新鋭は、6月29日からそごう横浜店での個展も控えている。

 

今日へと続く分水嶺となったのは、高校の美術部だった。顧問の先生は東京藝大の日本画出身で、熱血指導のもと走り込みをすることも。予算的に膠は使えず、ボンドを溶いて絵の具を混ぜた“膠もどき”で絵を描いた。半年かけて挑んだ50号の大作は全国大会にも進み、先生との出逢い、美術部での時間が標となったことは疑いない。

 

愛知芸大での恩師は、院展同人の松村公嗣。今でも反芻するのは、講評会で自分でも判然としない風景画を出した際にかけられた言葉だ。
「分からなければ何日でも観ているといいよ。よく観る内に分かってくることもある」
とにかく描くのではなく、観る――慈しみ溢れる眼差しの深さは、確かにその作品の魅力ともなっている。

 

《雨の日》

《雨の日》

 

現在、夫と5羽の鳥たちと暮らす河本が花鳥をモチーフとし始めたのは大学院に進んでから。きれいな描線や静謐な画面づくりを追求する内、心地よい余白の傍ら四季折々の小さな生き物や草花が息づくようになった。何より、描いていて癒される。自身含め、“一息”つく場所を求めている人は多い。

 

「コロナ禍でも絵の需要は減っていません。今だからこそ、飾られた場所に別の世界を、癒しの空間を作れたらいいなと思います。」

 

まだ小さい頃、妹が自分の絵や工作で喜んでくれることが嬉しかった。院生の時に初めて絵が売れ、お客さんの笑顔を見て画家としての道が見えた。家族や先生、そして自分の絵を観てくれる人たち――命のあたたかさ、それを愛おしむ想いに満ちた作品世界は、今も、これからもその前に立つ誰かのために在り続ける。

(取材:秋山悠香)

 

《山の花》

《山の花》

 

《寒牡丹》

《寒牡丹》

 

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河本 真里(Kawamoto Mari)

 

1990年愛知県生まれ、2016年愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士前期課程日本画領域修了、修了模写《観音正寺 千手観音像》同学買い上げ。現在日本美術院院友。13年第68回春の院展及び再興第98回院展に初入選、以後毎年入選。16年再興第101回院展にて奨励賞と天心記念茨城賞のW受賞を果たす。これまで新橋・いつき美術画廊、名古屋・アートサロン光玄、名古屋丸栄、日本橋三越で個展開催、グループ展多数。6月29日~7月5日そごう横浜にて個展開催予定。

 


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