[画材考] 日本画家:金子富之「異界の畔(ほとり)」

2018年09月10日 10:00 カテゴリ:コラム

 

夜、狐の声を聴いた者は寂しそうに耳に残って離れないと言う……。

夜、狐の声を聴いた者は寂しそうに耳に残って離れないと言う……。

 

山賊の足跡

山賊の足跡

私の住む雪に閉ざされる限界集落では熊、狐、狸、猿、蝮(まむし)、羚羊(かもしか)、猪などが出没し、熊が現れた場合などは地区会長がウォーキングや農作業を十分気を付ける様、緊急のお達しが回されます。

 

野生動物は異様な迫力があり、羚羊は夜の闇の中では巨大な怪物の様に見え目が赤く光り、近眼の為近づいても逃げません。猿も集団になると人間を威嚇し猿の群れにより自転車を奪われた方もいらっしゃいます。しかし鉄砲を持つ老師が一人おり獣害から我々をなんとか守って頂いております。

 

野生の猛威だけでなく、それぞれの土地々々にはその場固有の地霊や精神風土が横たわり、その霊的風土は神々や精霊を幻成、影現させます。私の住む地域も例外でなく、近隣の金山峠には山姥(やまんば)がいると言われ、集落に良く肉を売りに訪れその肉には人の爪が混ざっていたそうです。また山賊が住む山があり〝山賊の足跡〟が今も残っています。

 

大蛇伝説も存在し実際にこの地域の青大将は2メートル位になり天井からぶら下がって村人を恐怖させたこともあり、巨大化した青大将は主とみなされ殺してはならないと言われます。殺さないからさらに大きくなるものが出るのです。そしてかつて銅山であったこの地の地下に坑道が張り巡らされ闇の迷宮となっており、ある夜、鉱山から謎の轟音が聞こえ、それは昔の閉鎖された坑道で落盤がおきた音なのだと言われております。その様な地で妖怪、精霊、神様を描かせて頂いております。

 

山姥(やまんば)がいると言われる金山峠

山姥(やまんば)がいると言われる金山峠

 

制作風景

制作風景

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金子 富之 (かねこ・とみゆき)

 

1978年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学大学院芸術工学研究科博士課程修了。山形県在住。9月1日(土)~24日(月・祝休)の金・土・日・祝日に開催される「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ2018」に参加。

 

 

【関連リンク】ミヅマアートギャラリー:金子 富之

 

 

 


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