[画材考] 陶芸家:和田 的「名工 小野寺玄先生を偲ぶ」

2017年11月30日 17:30 カテゴリ:コラム

 

 

土をこよなく愛しその土に愛された小野寺玄先生がご逝去され、早いもので1年半が経った。

 

陶芸には、陶器、磁器、炻器と大別されるように様々な土の性質がある。10年ほど前、初めて先生の工房にお邪魔した際に、轆轤場にズラリと並べられた鉱物を朝から晩までかけ、地球上の岩石が陶芸の粘土として使えるようになるまでの、数万年にわたる壮大なドラマを端から順繰り説明していただいたことがある。頭の中で自由に想像したものを具現化するためには、最低限、素材の性質を理解しなければ形にはならない。

 

私の扱っている磁器土は、白磁の産地、佐賀県の有田で作られている。今年の9月、その製造工程を実際に現地へ伺い、見学させていただく機会を得た。磁器土の主原料である天草陶石の原石は、いくつかの等級に分けて山積みにされていた。私が使用している特級品は、明らかに原石の状態から美しい。まずは原石を杵と臼で粉砕し、水と攪拌させ一番荒い砂粒状のものをかき出す。それを繰り返したのち、沈澱槽へ移し、脱鉄、篩をかけ水分を調整し粘土になる。開窯400年の歴史を持つ有田だが、これらの工程は機材は変われど、当時とほぼ変わらない手順で連綿と受け継がれてきたそうだ。

 

近年、この美しい天草陶石も質の良いものが減少してきているという。帰路の機内でふと浮かんだ、「天草陶石は神様からの贈りものだよ。」と私に優しく語りかけて下さった小野寺先生のお声が忘れられない。

 

白器水指《表裏》

白器水指《表裏》

 

左:白器《とり》 右:白器《表裏》

左:白器《とり》 右:白器《表裏》

 

 

和田 的 (わだ・あきら)

 

1978年千葉県生まれ、日本工芸会正会員。天草陶石を主な原料にした磁土をろくろで挽き、乾燥後に彫刻刀で形を彫り出し焼成する。今年は第27回タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞、第64回日本伝統工芸展東京都知事賞、第37回伝統文化ポーラ賞奨励賞と受賞に恵まれた年であった。今後は東海ステーションギャラリー(12/3〜16)と仙台三越(2018/2/7~13)で個展を開催予定。大賞を受賞した「第7回菊池ビエンナーレ」は12/16~2018/3/18に菊池寛実記念智美術館で開催される。

 

【展覧会】第7回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の<今>

【会期】2017年12月16日(土)~2018年3月18日(日)

【会場】菊池寛実記念 智美術館(東京都港区虎ノ門4-1-35 西久保ビル)

【TEL】03-5733-5131

【休館】月曜、祝日のとき翌日、年末年始(12/28~2018/1/1)

【開館】11:00~18:00 (入館は17:30まで)

【料金】一般1,000円 大学生800円 小・中・高生500円

 

【関連リンク】和田 的 Official site

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