[画材考] ガラス造形作家:塚田美登里「色板ガラス」

2017年07月03日 11:00 カテゴリ:コラム

 

 

私が作品制作に使用しているガラスは、粉、粒、棒状、板材等沢山の形状や色彩があり、主に板材を電気炉で何度も熱して成形をしている。この板材は窓ガラス等の青板ガラスとは別物で、ガラスアートの為の特別なものだ。

 

私はアメリカから輸入品を購入していたが、昨年、業界では最大手で私の制作には不可欠なこの企業が廃業してしまった。私はもちろんだが、世界中のガラス作家を衝撃と不安が不意に襲ったのだ。後継企業が決まりメキシコへの移設となったが、従来と同様の色数の提供は難しく、値上げ等の心配もあるが、再編し継続する企業を固唾を呑んで見守っている状況である。現代では画家が絵の具を選ぶように様々なガラス材料の購入が出来るが、これはガラス生産に対する温かい理解と技術の進歩が支えた尊い事であったと気づかされた。先人たちの貢献により、ある程度使いやすい状態のガラス材料が輸入され、私のアトリエのような小規模な施設でも制作が可能になった。作家に集中出来る環境と時間が与えられたのである。

 

私は、ガラスという素材は新しい可能性で満ちていると感じている。試行錯誤や実験を続ければ、もっと自分らしい表現を見つけられるかもしれない。私はガラスと向き合える事に感謝し、ガラスアートの存在感を高められるような作品制作を目指したい。そうすることが、微力ながらこの美しい世界と未来の作品を守っていく事に繋がるのではないかと思うのである。何十年先も変わらずガラス作品が生まれる事を祈り、制作を続けたい。

 

 

《森羅》

《森羅》

 

《natural lace /sea》

《natural lace /sea》

 

《光華#4》

《光華#4》

 

 

塚田美登里 (つかだ・みどり)

1972年岐阜県生まれ。富山ガラス造形研究所、金沢卯辰山工芸工房などを経て、現在は富山市を拠点に活動。「国際ガラス展・金沢」「KOGANEZAKI・器のかたち・現代ガラス展」などで受賞多数。主な収蔵先に金沢21世紀美術館、東京ミッドタウン、富山市ガラス美術館など。
7月12日~18日には髙島屋日本橋店で個展を開催。展覧会タイトルの「積翠」とは積み重なったみどり色の意味で、青々とした山や海を表わす言葉。これまでの作品は植物の葉脈や木漏れ日等、森や山をイメージするものが多かったが、今回は珊瑚や海藻、波、泡をイメージした「natural lace/sea」シリーズを主に出品する。新作を中心とした約60点が、青から緑のグラデーション状に並ぶ。

 

【展覧会】塚田美登里 -積翠-

【会期】2017年7月12日(水)~18日(火)

【会場】髙島屋日本橋店6階美術工芸サロン(東京都中央区日本橋2-4-1)

【TEL】03‐3211-4111(代表)

【休廊】無休

【開廊】10:30~19:30 ※最終日は16:00閉場

【料金】無料

 

《natural lace / sea》

《natural lace / sea》

 

【関連リンク】塚田美登里

 

 


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