[フェイス21世紀]:吉竹 昌子〈画家〉

2017年04月10日 10:05 カテゴリ:コラム

 

絵を描くことは闘い

 

 

昨年末、京橋のアートスペース羅針盤で個展を開き、特徴的な画肌によるエネルギーに溢れた画面で注目を集めた。個展のさなか、来場した一人の女性が開口一番「闘っているの?」と聞いたという。えっ、虚を突かれて口籠った。しかし、何を描けばいいのか、どのように描けばいいのか、いつも試行錯誤している。「確かに、私は闘っているのかもしれない」。

 

美大受験で挫折を味わった。予備校に入って最初のクラス分けの石膏デッサンで、一番下のグループに。「幼い頃から通っていた絵画教室とは全く別物。その年の夏には、美大を諦めてしまいました」。それでも美術以外にやりたいことは無いと、和光大学表現学部に進む。

 

そこで出会ったのが、日本画家の山本直彰である。山本のゼミに入り、初めて日本画の画材に触れ、日本画の世界を知った。当時、山本が所属していた創画展にも2005年より出品を始めた。

 

技法について、あれやこれやと言われたことはない。しかし、常に「デッサンが基本だ」と指導を受けた。描きたいものがあれば、必ず現場に行ってデッサンをしなさいと。その教えが、今の作風に繋がっている。

 

デッサンの時の感情の動きを、勢いを活かそうと、岩絵具に木炭、コンテを組み合わせて描く。モチーフは身近な風景や太陽、雨、ときに自画像。岩絵具の鮮やかな色彩と勢いのある線が織りなす画面が、観る者を強く引き付ける。

 

憧れの画家は、山本の師である片岡球子。「構図や色彩は大胆なのに、細部にまで全神経を注いで描いていることが伝わってくる」。とても厳しい人だったと聞いた。片岡の画集を開くと背筋がぴんと伸びる。「私は絵が下手です。でも、いつか彼女のように観る人をワッと言わせるような絵を描きたいんです」。だから、誤魔化さない。奇をてらわない。ひたすらまじめに闘っていくのだ。

(取材:和田圭介)

 

 

 

アクリル絵の具や墨汁、岩絵の具、コンテなど多様な素材を使って制作する

 

 

アトリエの壁には片岡球子の記事が

 

.

吉竹 昌子 (Masako Yoshitake)

 

1982年神奈川県生まれ。和光大学で山本直彰の指導を受け、2006年同大学表現学部専攻科造形文化専攻修了。創画展には05年に初入選。以降08、10、11、12、13年入選。また、10年の第46回神奈川県美術展で特選を受賞している。主な出品は13年「きわ展」(アートスペース羅針盤)、14年「新・収蔵品展-平成25年度収蔵」(佐久市立近代美術館)。16年にアートスペース羅針盤で個展を開催した。

 

第43回東京 春季創画展(4月13日〜4月19日@T-ART GALLERY・TERRATORIA)に入選。

 


関連記事

その他の記事