[フェイス21世紀]:今井 完眞〈陶芸家〉

2016年11月07日 10:00 カテゴリ:コラム

 

素材の表情

 

8月29日撮影

 

初めて青磁作品を制作した際、モチーフに選んだのは蟹だった。「陶器のぬめっとした感じは、甲殻類の成形に向いているのでは」。素材から導き出した題材だった。

 

陶芸一家に生まれ、幼い頃から粘土遊びのような感覚で土を触っていた。祖父は海洋生物などの陶で知られる文化功労者の今井政之。父は今井眞正。家の手伝いといえば、窯の薪割りだった。

 

当時、祖父たちの仕事については「渋すぎてよく分からなかった」と笑う。陶よりも漆や切子といった分かり易く綺麗なものに惹かれ、高校時代に浦口雅行の青磁に魅せられる。その後大学1年の進級展で、初めて蟹の青磁作品を制作した。

 

左:「弁慶蟹」 2016年 W 10.5×D 9.5×H 11.0㎝  右:「弁慶蟹」 2016年 W 10.5×D 9.0×H 12.0㎝

 

今も何より大事にしているのは、素材の表情。目の前の素材と向き合い、焼き方も考慮しつつ、ふさわしいモチーフを選びだす。細部にこだわった海洋生物や花の作品は「スーパーリアリズム」と評されることも多いが、単に正確さを目指しているわけではない。「見せたいのはモチーフの本質。それは祖父の制作との共通点かもしれません」。

 

最近出合った素材は、光をよく通す信楽透土。透光性を活かし、聖護院かぶらなど地元・京都の野菜を成形した。光を跳ね返すのではなく「吸ってくれる」白さは、植物ならではのものだ。

 

今年9月には、あべのハルカス近鉄本店にて祖父、父、叔父の裕之との4人展を開催した。3代現役の家は少ない中、完眞の「創作陶芸」は次代の新たな風となる。

 

今度の日本橋三越での個展テーマは、海。巨大なシーラカンスの作品をはじめ、蟹や魚、イカに海亀が空間を遊ぶ。実はそれらの中には、石垣島などで自ら捕ったものも多くあるのだという。

 

今後は醜さやグロテスクな要素もすべて含めた「美しさ」を表現したいと語る。モチーフらしさに踏み込んで、血液まで感じさせるような陶器を。今日も素材と優しくにらめっこする。

(取材:岩本知弓)

 

「卯ノ斑渡蟹」 2016年 W 22.0×D 16.5×H 33.5㎝ 陶土 穴窯焼成

 

左:「海亀」 2016年 W 21.0×D 16.0×H 9.0㎝  右:「海亀」 2016年 W 21.0×D 20.0×H 8.2㎝

 

左より:「メンダコ」 2016年 W 18.0×D 15.0×H 22.0㎝、「メンダコ」 2016年 W 22.5×D 26.0×H 13.0㎝、「鰒」 2016年 W 19.0×D 12.0×H 9.0㎝

 

 

※今井の「今」は異体字、中は「ラ」でなく「テ」

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今井 完眞 (Sadamasa Imai)

 

1989年、陶芸家今井眞正の長男として京都に生まれる。祖父は陶の世界における象嵌技法の第一人者・今井政之。高校時代は彫刻を専攻。昨年東京藝術大学大学院美術研究科陶芸専攻を修了。京都と広島を拠点とし、本格的に作家活動を開始した。来春、銀座・黒田陶苑では3度目となる個展を開催予定。

 

今井完眞 陶展 —海—

【会期】 2016年11月9日(水)~15日(火)

【会場】 日本橋三越本店本館6階 アートスクエア(東京都中央区日本橋室町1-4-1)

【TEL】 03-3241-3311

【開場】 10:30~19:30

 

【関連リンク】 Mizenka Gallery: 今井 完眞

 


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