瀬戸内国際芸術祭2016 開幕レポート SETOUCHI TRIENNALE 2016

2016年03月29日 11:55 カテゴリ:コラム

 

海を渡り島々を結ぶ現代アートの祭典

 

高松港より女木島、男木島、豊島方面を望む。写真左下にはリン・シュンロン(林舜龍/台湾)の椰子の実をイメージした「国境を越えて・海」が設置されている。

高松港より女木島、男木島、豊島方面を望む。写真左下にはリン・シュンロン(林舜龍/台湾)の椰子の実をイメージした「国境を越えて・海」が設置されている。

 

瀬戸内海の島々を結び、自然と人間の関係、伝統と文化の力を復活させようと始まった3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」が第3回を迎え、3月20日開幕した。会期は、春:3月20日~4月17日、夏:7月18日~9月4日、秋:10月8日~11月6日の3シーズン計108日。

 

直島・豊島・女木島・男木島・小豆島・大島・犬島(以上全会期)、沙弥島(春会期)、本島・高見島・粟島・伊吹島(秋会期)の12の島々と高松港、岡山・宇野港が会場となる。 作品数206件(うち新作140件)、38のイベント、226名(組)の作家、34の参加国・地域による。作家数と参加国・地域数は前回を上回る。食とアートのコラボ企画も数多い。

 

フェリーに乗って島へ渡り、海の風、潮の香り、波の音を感じながらの特別なアート体験となることだろう。

 

開幕前日の19日、小豆島、女木島の新作を巡るプレスツアーに参加した。印象に残った作品を紹介しよう。

 

【小豆島】

オリーブや醤油、塩の特産品や映画「二十四の瞳」の舞台で知られる〈小豆島〉では、醤の郷地区の運河沿いにサヘジ・ラハール(インド)の立体彫刻群「Revenants」。旧醤油倉庫の土壁を立体に塗り込み、柔らかな材質感が白い壁とむき出しの柱が並ぶ空間とよく溶け合う。

 

京都造形芸術大学城戸崎和佐ゼミ+grafの「竹の茶室」。島の特産品・醤油産業の象徴、旧醤油会館と内海八幡神社に挟まれた竹薮に設置され、侘び寂びを超越した光溢れるキッチュな造り。利休が見たら何を思うか。

 

サヘジ・ラハール(インド)《Revenants》

サヘジ・ラハール(インド)《Revenants》

 

京都造形芸術大学 城戸崎和佐ゼミ+graf《竹の茶室》

京都造形芸術大学 城戸崎和佐ゼミ+graf《竹の茶室》

 

《竹の茶室》躙り口から見た内部

《竹の茶室》躙り口から見た内部

 

 

その旧醤油会館ではソサ・ジョセフ(インド)の絵画作品「What are we?」。インドの群像風景や日本滞在で感じた島の暮らしなど、ユニークな視点の絵画。

 

ソサ・ジョセフさん(インド)

ソサ・ジョセフさん(インド)

 

 

島の内陸部・中山地区ではワン・ウェンチー(王文志/台湾)による「オリーブの夢」。地元住民が伐り出した5000本の竹をワンが巨大ドーム(高さ約15m、径約20m)に編み上げた。小豆島の特産品・オリーブをイメージしたという。美しい千枚田の坂道を下り作品にアプローチする行程と、内部に広がる解放感ある空間構造も合わせて楽しみたい。

 

坂の上、道路沿いには「こまめ食堂」があり、「オリーブの夢」と棚田風景をゆっくり眺めることができる。その脇の春日神社入口には中山農村歌舞伎保存会の舞台があり、歴史ある農村歌舞伎の伝統の一端が垣間見える。

 

棚田の底に建てられたワン・ウェンチー(王文志/台湾)《オリーブの夢》

棚田の底に建てられたワン・ウェンチー(王文志/台湾)《オリーブの夢》

 

ワン・ウェンチー(王文志/台湾)《オリーブの夢》

ワン・ウェンチー(王文志/台湾)《オリーブの夢》

 

爽やかな空間が広がる《オリーブの夢》内部

爽やかな空間が広がる《オリーブの夢》内部

 

 

同島の表玄関・土庄(とのしょう)港にはフェリーターミナルを改装した「アートノショーターミナル」。1階ではアトリエオモヤによる太鼓のリズムに10万個のビー玉が光り、白い布が波のようにうねり反応する作品や、2階ではコシノジュンコのファッション群が出迎える。訪れた日は同ターミナルの完成式典が行われ、関係者や来賓が集まり、作品除幕式と太鼓演奏などが盛大に開催された。小豆島高校のセンバツ初出場(2日後)も重なり、島は二重の歓びに沸いていた。

 

「アートノショーターミナル」2階会場のコシノジュンコさん

「アートノショーターミナル」2階会場のコシノジュンコさん

 

「アートノショーターミナル」

「アートノショーターミナル」

 

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女木島のカオス*ラウンジ、大竹伸朗…

 

 


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