[寄稿] 文化庁海外展「日本の工芸未来派」NYで開催:秋元雄史

2015年11月27日 15:25 カテゴリ:コラム

 

 

金沢21世紀美術館で平成24年4月28日から8月31日に開催した展覧会「工芸未来派」が、文化庁海外展「日本の工芸未来派」として、アメリカ・ニューヨーク市のミュージアム・オブ・アート・アンド・デザインにおいて、本年10月20日から来年2月にかけて開催中である。

 

展覧会を企画した私は準備のために参加作家8名とともにニューヨークへ渡った。オープン前日の19日には、美術館の理事会メンバー、VIPやプレスを含めた関係者が内覧会とレセプションに多数参加した。マンハッタンは、秋のシーズン開幕ということあり、どこも活況を呈している。同日にはメトロポリタン美術館でも日本美術の展覧会のレセプションが開催されていた。

 

出品作家は12名、出品作品数は77点。米国内からの出品も11件含まれていて、すでに米国でファンを獲得してコレクターに所蔵されている作家も数名いる。

 

展示は、未来的なイメージを醸し出す工芸作品によって構成され、陶器、磁器、漆芸、人形など、それらはいずれも「今日のアート」として着目されるものだ。

 

7作品のベースは工芸技法であり、中には徹底的に技法的な展開を追求する作家もいて、各自が工芸独自の技術展開をしているのだが、作品としての存在感、在り方は現代アート的であり、今日の表現として、強い個性を放っている。

 

漫画、アニメ、映画などのサブカルチャーとの関連が指摘できるイメージを展開し、作品の背景には神話や寓話などを連想させる、強い物語性が特徴である。

 

技法はそれらを強調し、迫真性を持たせるための方便であり、技法至上主義的な工芸とは異なっている。技法とアイデア、コンセプトが渾然一体となった工芸と現代アートのハイブリッド型の作品とでもいえるものである。

 

主な出品作品は、青木克世「予知夢XXXII」(2012年)、 葉山有樹「龍孫黄帝図鉢」(2006~07年)、猪倉髙志「かげを纏うかたち2011-03」(2011年)、桑田卓郎「黄色化粧白銀彩梅華皮志野垸」(2012年)、見附正康「無題 大皿」(2012年)、中村康平「RESURRECTION(物語るために)」(1999年)、中村信喬「羅馬聖光」(2011年)、野口春美「イノシシ」(2014年) 、大樋年雄「白楽茶碗 コロラドの土」(2005年)、竹村友里「盌『雫』」(2011年)、「雲龍庵」北村辰夫「更紗蒔絵十字架」(2007年)、山村慎哉「卵殻塔形重香合」(2009年)など、多様なスタイルの表現が並ぶ。

 

文化庁では、日本の優れた文化財を諸外国に紹介することにより、我が国の歴史と文化に対する理解の増進と国際親善の推進に寄与することを目的として、毎年、海外展を開催している。平成27年度は、金沢21世紀美術館で私が企画した「工芸未来派」展が対象となった。

 

(金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学大学美術館館長)

 

 

【関連リンク】The Museum of Arts and Design「Japanese Kōgei | Future Forward」(英語)

 


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