阪神・淡路大震災から20年:江上ゆか

2015年01月16日 09:13 カテゴリ:コラム

 

阪神・淡路大震災から20年

―江上ゆか(兵庫県立美術館学芸員)

 

2015年1月17日で、阪神・淡路大震災から20年となる。兵庫県立美術館の常設展示室では、この日を含む期間に、コレクションを軸に借用作品も交え、震災をテーマとする展覧会「阪神・淡路大震災から20年」を開催している。

 

米田知子《空地 Ⅱ-市内最大の被害を受けた地域》

米田知子《空地 Ⅱ-市内最大の被害を受けた地域》 2004 国立国際美術館蔵
copyright the artist courtesy ShugoArts

 

当館の前身である兵庫県立近代美術館は、当時、建物と38点の所蔵品に被害を受けた(未明の地震であり館内での人的被害がなかったことは、不幸中にして最大の幸いである)。震災から20年を経て記憶の風化が問題となっているが、美術館とて例外ではない。そのとき、そしてそれから美術館で何が起こったのか、改めて振り返ることは、東日本大震災後の今だからこそ、欠かせないと思われた。同時に20年という時の経過を考えると、災害と美術をより広くとらえる視点も必要だろう。また震災に関する作品については、かつて開催した企画展「震災から5年 震災と美術―1.17から生まれたもの―」(2000年1月15日~3月20日)で、直後の被災地の姿をとらえた作品を数多く取り上げたこともあり、一定の時が過ぎたからこその表現に焦点をあてたいと考えた。

 

西田眞人《瓦礫の街》

西田眞人《瓦礫の街》

 

これら3つの視点を軸に、展覧会は3部構成をとっている。第1部では自然の脅威と美の表現を近代に遡り紹介。第2部では1.17から現在までの美術館の動きを、作品を次世代に伝える活動を軸に振り返り、第3部では美術作家、米田知子が震災から10年にあたり芦屋市で制作した写真作品のシリーズを展示している。

 

なお兵庫県南部地域では同時期に様々な文化施設で震災関連の企画が実施されており、当館を含む9施設が連携して各館の担当者から担当者へと対話形式で繋ぐ「阪神・淡路大震災20年・語り継ぐこと/リレートーク」という試みも行われている。

(えがみ・ゆか)

 

福田美蘭《淡路島北淡町のハクモクレン》

福田美蘭《淡路島北淡町のハクモクレン》

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◇リレートーク:阪神・淡路大震災20年〈1995→2015〉語り継ぐこと

この取組みは、阪神・淡路大震災20年の節目に、被災地エリアの文化施設での震災関連事業として、各館担当者が会場をリレートーク形式でつなぎ、震災を語り継ぐもの。ラインナップは以下の通り。

 

 

vol.1 デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)  ※要申込

【日時】1月17日(土) 19:00~20:00

マッピングプロジェクト公開インタビュー:震災当時を振り返って―作家とともに

トーク:とみさわかよの×米田定蔵×松本ひとみ

震災直後から現在までのクリエイティブ分野の支援活動をリサーチしてまとめたプロジェクトの紹介と、当時を振り返る公開インタビューを行う。

【展覧会】「神戸発・楽しみながら学ぶボウサイ」展示会

【会期】2015年1月17日(土)~2月15日(日)

TEL 078-325-2235

 

vol.2 神戸ファッション美術館

【日時】1月24日(土) 14:00~15:00

ファッションとアートの繋がり

トーク:松本ひとみ×和田かおり 

震災以降のアートとファッションにおける取組みをマッピングプロジェクトと展示作品から辿り、表現や背景について探る。

【展覧会】衣服にできること―阪神・淡路大震災から20年

【会期】2015年1月17日(土)~4月7日(火)

TEL 078-858-0050

 

vol.3 芦屋市立美術博物館

【日時】1月31日(土) 14:00~15:30

ここから、これから/わたしたちの生活(くらし)

トーク:和田かおり×大槻晃実 

震災を機に芦屋市美術博物館が行った活動の内容を振り返りながら南芦屋やHAT神戸などの復興住宅を例としてアートと衣食住について考える。

【展覧会】光の空―阪神・淡路大震災から20年―芦屋

【会期】2014年12月13日(土)~2015年2月8日(日)

TEL 0797-38―5432

 

vol.4 兵庫県立美術館 

【日時】2月21日(土) 16:00~17:30

救うこと、残すこと―「作品」と「思い」

トーク:大槻晃実×江上ゆか 

芦屋市立美術博物館、兵庫県立近代美術館が関わった「文化財レスキュー」の活動を例に、被災作品や資料を救い次世代に残すことの意味を考える。

【展覧会】阪神・淡路大震災から20年

【会期】2014年11月22日(土)~2015年3月8日(日)

TEL 078―262―0901

 

vol.5 BBプラザ美術館

【日時】2月28日(土) 14:00~15:00

「震災と美術」から15年

トーク:江上ゆか×宮本亜津子 

2000年に兵庫県立近代美術館で開催された「震災と美術 ―1.17から生まれたもの―」展を振り返りつつ、展示作品を前に、震災と表現について考える。

【展覧会】震災から20年 震災 記憶美術

【会期】2014年12月16日(火)~2015年3月8日(日)

TEL 078-802-9286

 

vol.6 神戸ゆかりの美術館 

【日時】3月14日(土) 14:00~15:30

枠組みを超えた関係作り

トーク:宮本亜津子×田中梨枝子 

震災後の記録を辿るとともに、地元の芸術・文化を普及するための文化施設同士の関係作りについて考える。

【展覧会】アーカイブ/港町の情景、時代を語る絵画

【会期】2015年1月17日(土)~3月22日(日)

TEL 078-858―1520

 

vol.7 C. A. P.

【日時】4月予定

タイトル未定

トーク:田中梨枝子×高橋怜子 

トーク内容未定

【展覧会】震災20年後のサウンドスケープ 神戸音環境調査より

2015年1月10日(土)~25日(日)

【展覧会】東日本大震災に関する展示を計画中

【会期】2015年4月予定

TEL 078―222―1003

 

vol.8 神戸アートビレッジセンター(KAVC)

【日時】5月予定

未定

トーク:高橋怜子×伊藤まゆみ 

トーク内容未定

【展覧会】まちあるきを計画中

【会期】2015年5月予定

TEL 078―512―5500

 

vol. 9 明石市立文化博物館

【日時】6月20日(土) 14:00~15:30

震災を語り継ぐということ―文化施設の20年

トーク:伊藤まゆみ×とみさわかよの 

これまでのトーク内容から、文化施設が行ってきた震災支援・発信・継承を今一度見つめ、リレーを締めくくる。

【展覧会】阪神・淡路大震災20年「明石ゆかりの作家による震災画」

【会期】2015年6月20日(土)~7月26日(日)

TEL 078-918―5400

 

 

いずれも参加無料・当日先着順。ただし、事前申し込み・展覧会チケットが必要な場合や定員があるイベントもあるため注意。(※問い合わせは各館まで)

またFacebookページにも詳細の記載あり。なお神戸のタウン誌「月刊神戸っ子」には今回のリレートークを企画した11名のキュレーターによるの座談会が掲載されている。

 

 

※「新美術新聞」では東日本大震災を契機に、美術と震災の関係を考察した特集「美術と震災」を掲載。アーカイブを公開しています。

 

 


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