【レポート】「千葉市美術館友の会バスツアー2014」参加体験記

2014年12月24日 18:56 カテゴリ:コラム

 

 

友の会を設置している美術館・博物館の中で、会員を対象にした日帰りツアーを実施している例があります。友の会バスツアーを2008年より実施している千葉市美術館は、その先駆けと言えるかもしれません。毎回多くの会員が応募し、当選率約3.6倍という人気の催しに参加した友の会会員である記者が体験記をお届けいたします。

 

 

■箱根を目指して
12月4日午前8時、定刻に千葉駅近くを出発したバスに乗った42名。150名近い応募の中から当選したラッキーな会員38名に付き添ってくださるのは、河合館長、引率役の職員Nさん、学芸員Mさん、広報担当Iさんです。

 

バスツアーの目的地は、次年度に開催される展覧会に関連した土地が選ばれます。今回は箱根。来年開館20周年を迎えることを記念して開催される「歴代館長が選ぶ 千葉市美術館所蔵名品展」が隠しテーマです。

 

 

■車中にて:自己紹介と河合館長のお話
車中、会員の自己紹介が始まりました。千葉市はもとより、県内では銚子、木更津、松戸から、また東京都内からの参加者も。田中一村が住んでいた家のお隣さんもいらっしゃいました。その田中一村展、曾我蕭白展、若冲展、鈴木春信展、浜口陽三展、現在開催中の赤瀬川原平展等々、千葉市美術館で行われた展覧会で心に残ったものが次々と挙げられます。落ち着いた雰囲気の中、充実した内容の展覧会がじっくり鑑賞できる千葉市美術館に会員一同満足しているようです。

 

千葉市美術館の初代館長は、若冲ブームを生むきっかけをつくった辻惟雄氏(MIHO MUSEUM館長)。二代目は館長を13年務めた小林忠氏。そう、今回のツアーの目的地の一つは、小林前館長が館長を務める岡田美術館なのです。三代目の河合館長は、お二人と旧知の仲。「歴代館長が選ぶ 千葉市美術館所蔵名品展」の作品選定のため、11月末に三人が集まり一泊して喧々諤々の議論を重ねたそうです。光琳没後300年を迎える来年、琳派の中でも鈴木其一「芒野図屏風」の出品については三人の意見が一致したとか。

 

作品購入予算が潤沢だった時期、将来を見据えて購入し価値が高まっている作品も少なくないようです。河合館長は「よくやった、よく見つけた」と先輩館長や学芸員の功績を称えつつ、「千葉市の財政が逼迫しても、これを売ればどうにかなる」という過激な発言に、千葉市民が多数を占める車中から笑い声が。

 

作品の修理修復で、古美術よりも現代アートが難しい面があると、意外なお話も。例えば、ノーベル賞受賞で現在話題のLED。アートにも取り入れられていますが、その技術の進歩が著しいがために、初期の作品は維持修理が大変なのだそうです。

 

 

■ポーラ美術館
11時前にポーラ美術館に到着。講義室にて学芸員の東海林さんにご挨拶をいただいた後、自由見学。

 

現在開催中の「紙片の宇宙 シャガール、マティス、ミロ、ダリ」展(~2015年3月29日)や常設展では、ポーラ美術館のコレクションの充実ぶりに目を見張りました。「紙片の宇宙」展ではローランサンによる「不思議の国のアリス」など、珍しい作品が多数見られます。

 

ショップで買い物したり、レストラン「アレイ」で豪華なランチを楽しみ、ポーラ美術館を後にしました。

 

 

大きなガラス窓から森の風景が見える。「箱根の自然と美術の共生」がポーラ美術館のコンセプト。

 

東海林学芸員によるレクチャー

 

「紙片の宇宙」展 展示室入口

 

ポーラ美術館レストラン「アレイ」

 

ランチのオードブル

 

ミュージアムショップ

 

【関連リンク】 ポーラ美術館 「紙片の宇宙 シャガール、マティス、ミロ、ダリ」展

 

 

■岡田美術館
午後1時半過ぎ、今秋開館1周年を迎えた岡田美術館に到着。入口付近のロッカーでカメラや携帯電話を預け、空港並みのセキュリティチェックがあります。

 

スライドを使った小林館長のレクチャーのテーマは、速水御舟の二大傑作「炎舞」と「木蓮」。岡田美術館が所蔵する「木蓮」は、自著の裏表紙にも使ったことがある、小林館長の深い思い入れのある作品です。同館長によれば、二作は対になるように制作されたもの。「炎舞」の所蔵先は山種美術館ですが、この二作を並べて展示するのが夢。「並べたいなぁ」から「(山種美術館が)譲ってくれないかなぁ」と野望をふくらませつつ、「人間って欲深いもの」と笑う同館長。美に魅入られて炎に身を投じる「炎舞」の蛾のごとし、といったところでしょうか。

 

開催中の「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」展(~3月31日)では、この「木蓮」と横山大観の「霊峰一文字」を絶対に見逃さないこと、というご教示を胸に展示室に向かいます。4フロアーにまたがる展示。本来なら半日、一日をかけて鑑賞したいところです。展示室全体の照明はかなり抑えられていますが、部分照明で鑑賞には全く支障ありません。貴重な箱書きも一緒に展示されている作品もあり、画家による筆書きにも見入ってしまいました。あっという間に集合時間。生憎の雨で足湯や庭園散策を楽しめなかったことを惜しみつつ、一同バスに乗り込みました。

 

午後7時半過ぎ、出発地に無事帰還。「このツアーに参加して、会員継続の決意が固まった」という会員も。千葉市美術館を愛する会員、その愛情をより深めた一日になったようです。河合館長、小林前館長、館の皆様、楽しいツアーをありがとうございました。

 

正面玄関

 

正面の壁画「風・刻(とき)」。俵屋宗達「風神雷神図屏風」を福井江太郎氏が再現

 

足湯カフェ

 

【関連リンク】 岡田美術館 「大観・春草・御舟と日本美術院の画家たち」展

 

「歴代館長が選ぶ 千葉市美術館所蔵名品展」

第1部:2015年4月10日(金)~5月10日(日)

第2部:5月19日(火)〜6月28日(日)

 

《千葉市美術館友の会》
・設立:1996年10月(同館開館の翌年)
・会員件数:2,167人(件)(※ファミリー会員は人数にかかわらず1件と換算)
・特典: ①千葉市美術館が主催する企画展や所蔵作品展が無料観覧(回数制限なし)② 会員同伴者割引(3名まで団体料金)③ミュージアムショップで、展覧会図録やグッズを販売価格の10%引き(一部除外品あり)④11階レストランでの飲食代5%割引⑤ 展覧会や講演会等の美術館情報を提供
・入会金(新規入会時のみ):一般会員 1,000円、学生会員(専・大) 500円 、ファミリー会員(家族4名まで) 2,000円
・年会費:一般会員 2,000円、学生会員(専・大) 1,000円、ファミリー会員 4,000円
・申し込み方法:美術館受付または郵便振替(口座記号・番号:00180-6-558036、加入者名:財団法人千葉市教育振興財団、通信欄に「千葉市美術館 友の会会費」と記入)

 

【関連リンク】 千葉市美術館

 


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