[フェイス21世紀] : 川島優

2014年10月26日 10:00 カテゴリ:コラム

 

心の内面、映すは「女性」

 

《Déjà vu》 2014年 223×179cm 再興第99回院展奨励賞

 

日本画を志したきっかけは自宅の画集で見た明治の大家・橋本雅邦だった。岡倉天心らとともに日本美術院の創立に参加し、遠近法を取り入れるなど当時の日本画に革新をもたらした雅邦。その姿を「カッコイイ」と思い、憧れた。院展への出品は極めて自然な流れだと言えるだろう。

 

高校時代から美術専攻のある学校を選び、その後愛知県立芸術大学へ進学。現在は同大博士前期課程に在籍し、松村公嗣に師事している。

 

作風の多くはモノクロームで描く“クールな”女性像。女性は日本画を始めた頃から描きたかったモチーフだったというが、最初に取り掛かったのは学部4年生の時。それまでは「ひたすら画材について学び、技法の習得に励んだ」。

 

ではなぜ女性にこだわるのか。それは「自分の内面的な感情を、ある種感情の象徴的な存在である女性を媒体として引き出したいから」。つまり画布に現れる女性たちは川島の心の姿であるとも言える。背景に描かれるのは現代社会の無機質さ、掴みどころのなさを表現したコンクリート壁。その殺伐とした風景に身を置く姿はまさに現代人そのもの。

 

(左)《Toxic》 2013年 194×111cm 損保ジャパン美術賞展グランプリ
(右)《Inside》 2014年 194×112cm  星野眞吾賞展優秀賞

 

日本画の新たな可能性を切り拓く作品が結果として現れ始めている。今年に入ってからは「第6回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞」で優秀賞を、「再興第99回院展」では奨励賞を受賞するなど躍進が続く。だが本人は「まさか自分がと思っていた」とあくまで謙虚な語り口だ。今後について尋ねると「博士後期課程への進学」との答え。これまでの受賞を一層の励みとして自身の表現と画力を高めていくつもりだという。繊細な画家の魂はこれからどのような姿となって立ち現れるのだろうか。

(取材/橋爪勇介)

川島優(Yu Kawashima)

1988年静岡県生まれ。愛知県立芸術大学博士前期課程在籍、日本美術院院友。

主な受賞に「FACE展2014」損保ジャパン美術賞展グランプリ(13年)、第6回トリエンナーレ豊橋 星野眞吾賞優秀賞(14年)、再興第99回院展奨励賞(14年)などがある。今後は現在浜松市秋野不矩美術館で個展が開催予定(12月9日~23日)。


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