富井玲子 [現在通信 From NEW YORK] : ポンジャ現懇10周年シンポ

2014年09月24日 20:00 カテゴリ:コラム

 

ポンジャ現懇10周年シンポ

 

 

ポンジャ現懇10周年シンポ「来たるべき新しい波のために―戦後日本美術史の現在」のチラシ
作品イメージ:池田学《予兆》2008年
株式会社サステイナブル・インベスター(神楽サロン)蔵
© IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery

9月11、12日の両日、私の主宰する研究グループ、ポンジャ現懇の設立10周年を記念するシンポジウムがニューヨークで開催された。ニューヨーク大学東アジア研究部門(トム・ルーサー教授)とポンジャ現懇の共催。1日目はNYUで開催、2日目は日本の現代美術紹介に歴史のあるジャパンソサエティーが会場を提供。大学院生から第一線の専門家まで総勢16人の研究発表。さらにはJSギャラリー館長の手塚美和子の企画による現代アートのビデオ上映もくわえて、盛大な企画となった。

 

ポンジャ現懇は、インターネットのメーリングリスト機能を利用した集団で、2003年4月に手塚美和子と私が呼びかけて設立された。英語名を直訳すると「1945年以後の日本美術を議論するグループ」。最近では、グループの略称としてPonja(ポンジャ)が定着するとともに、戦後日本美術という研究分野の愛称として「ポンジャ」を用いることも少なくない。

 

 

グループとしてのポンジャはネット上のバーチャルな存在だが、過去10年にミシガン大学やゲッティ研究所、グッゲンハイムなど大学や研究機関、美術館などと協力してシンポやパネルディスカッションを6回開催している。第1回シンポは05年、イェール大学との共催だったが、当時は研究者の層もまだまだ薄かった。

 

今回は7回目の共同事業で、研究者の裾野が広がり、研究の内容も厚みを増していることを反映して、アーカイブをテーマとしたワークショップ、また最新の研究成果を発表する学生パネルと専門家パネルの三本立て。発表者名やレジュメなどの詳細は、シンポのブログに詳しいので、そちらを参照されたい(ponja-genkon.blogspot.com)。

 

私自身は1日目の先頭バッターとして、MoMAのドローイング・スタディ・センターで同館所蔵の松澤宥の作品を見ながらの特別講義を行った。

 

中村宏ノートについて発表するする橘川英規 Photo by Michael Murphy

 

2日目―挨拶するジャパン・ソサエティー・ギャラリー館長の手塚美和子 Photo by Michael Murphy

 

MoMAのドローイング・スタディ・センターで館蔵の松澤宥作品について講演する富井玲子

 

同センターでは、作品調査のほかに、特別観覧を組み込んだ授業の受け入れを行っている。館外の専門家が、大学の授業や成人向け文化教室などの一環として、館蔵の素描や版画など紙の作品類を実見しながら講義やセミナーをするシステムである。事前予約が必要で定員制限もあるが、本物の作品を見ながらの講義は格別。入替制で2回繰り返して講義を行ったが、希望者を全員受け入れられず残念だった。

 

シンポ全体としては、発表者や観客の反響はよかったが、10周年ともなると次の10年を考えなくてはならない。次回の、あるいは次々回のポンジャ・シンポはどこで開催できるだろうか。堅実に現代日本美術研究の進んでいるヨーロッパでの開催は可能だろうか。と同時に海外におけるポンジャ研究者の輪もひろがっており日本の研究者との交流を拡大していくことを考えるなら、日本での開催も夢見てみたい。ということで、今回の報告は、次のように締めくくりたい。

 

ポンジャは競争の場ではなく、協働の場です。コラボしてみたいという大学や研究機関があるようでしたら、是非ご連絡ください。

 

(富井玲子)

 

「新美術新聞」2014年10月1日号(第1356号)3面より

 


関連記事

その他の記事