[ときの人] 赤坂憲雄さん 学習院大学教授・福島県立博物館館長

2012年08月10日 18:00 カテゴリ:コラム

 

 

撮影:川島保彦

東北学は第2章へ

 

東北を歩いて20年、文化や歴史を掘りおこし「東北学」を確立した。その足跡は『東北学/忘れられた東北』『岡本太郎の見た日本』など数多くの著作に結びつく。東北が被災し、「これまで何も見ていなかったような敗北感」も感じたという。おのずと今は、神社や寺、霊場などをめぐり手をあわす。「祈りの旅をしているのかなとも思います」。

 

東日本大震災復興構想会議の委員をつとめ、復興には文化芸術が不可欠と訴えるも、予算案では明記されなかった。「促進事業費」による対応が可能とされるにとどまったことへ、「文化が復興しなければ、コミュニティの再建などありえない」と強調する。所長をつとめる遠野文化研究センターでは全国に献本をよびかけ、1年で約30万冊が集まった。今後の文化復興支援のモデルともなりうる、信念の実践である。

 

被災地では、東北芸術工科大学での教え子たちとの再会もあった。震災後、絶望や無力感にさいなまれる若者へ、表現者としてこの現実と向き合わなければいけない時は訪れると語りかけた。「アートは表現へ熟成するのに時間がかかる。けれどもその分、とても深いところへ降りていく」。そして、「言葉はもっと時間がかかる」と自らを指す。

 

雑誌「G2」で始まった連載は本格的な震災考。来年3月の完成を目指す。1953年東京生まれ。

 

「新美術新聞」2012年5月21日号(第1280号)1面より

 

 


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