[ときの人] 寺坂公雄さん 公益社団法人 日展理事長

2013年07月22日 17:56 カテゴリ:コラム

 

撮影:川島保彦

撮影:川島保彦

日展は皆のもの ― 自由な創作を守る

 

 

5月、公益社団法人日展の理事長に就任した。日展は応募者数1万4千人、会員含む無鑑査の出品者は約700人と世界最大級の美術団体。その手腕や発言に注目が集まるが、「ひとりの権力だけで、すぐに変わるような組織ではいけない」と言い切る。100年をこす歴史の原動力となったのは、「日展らしい品位と穏健さ」、そして「許容範囲内のアンチテーゼ」との共存であると鋭く説く。

 

1933年生まれ、愛媛県松山市育ち。夏目漱石『坊っちゃん』ゆかりの旧制松山中学に通い、自由で気骨ある校風に触れた。愛媛大学在学中に、日展・光風会展へ初入選。2005年に日本藝術院賞・同会員就任、09年より光風会理事長をつとめる。

 

昨年4月に日展は公益社団法人へ移行した。そのため、一法人として「コンプライアンス」を重視する。目的は明快だ。日展は皆のものであり、会として作家たちの自由な創作活動を守るということだ。危惧するのは、高齢化と少子化。若く優れた作家の登場を待ち望み、「人こそが財産」と考える。

 

心安らぐのは、40年近く通う南八ヶ岳のアトリエであろう。環境汚染による植生変化に心を痛め、自然の美しい姿を後世に伝えるべく作品に描く。東京のアトリエでは、11月の日展に向け、赤く染まる紅葉の作品が描かれつつあった。静かに意欲を燃やす、新リーダーの心情も映し出すかのように。

 

「新美術新聞」2013年7月21日号(第1318号)1面より

 

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