[フェイス21世紀] : 押元一敏さん

2012年12月20日 18:00 カテゴリ:コラム

研ぎ澄むフォルム

際立つ造形の美

 

「我々は此処にいる」 2012年 230×200cm×3 雲肌麻紙、コラージュ、岩絵具、箔

 

2012年10月、上野の東京都美術館で「Artist Group -風-」が記念すべき第1回展を開催した。中島千波、中野嘉之そして畠中光享。美術界の第一線を走る彼らが創設し大きな話題を呼んだ同展で、ひと際異彩を放っていたのが押元一敏の「我々は此処にいる」だ。白を背に身を横たえる青い人物たち。その表情や動き、装飾性は大胆に省略され、純粋なフォルムの美しさだけが際立つ。静かな画面に確かな存在感を放つその作品に多くの来場者が魅せられていた。

 

押元一敏(おしもとかずとし)さん 横浜美術大学にて(11月7日撮影)

東京藝大のデザイン科に学び、同科教授の中島千波や大藪雅孝の画家としてのあり方に影響を受けながら押元は学生として9年、助手として6年を東京藝大で過ごした。97年の修了制作はデザイン賞、98年には三溪日本画賞展で大賞を受賞。そのように周囲の期待に応えていく中で、次第に「自分らしい作品とはどういったものか」を悩むようになったと話す。

 

藝大を離れた08年、押元はその作風を大きく変化させる。作品はより平面的で象徴的な画面へと姿を変え、単純な造形の美しさを追求する過程で、人物からは表情が消え、手足が消え、最後には胴体=トルソーが残った。それは、もの言わぬトルソー。しかしその造形の美しさが饒舌に観るものの心に訴えかける。「この表現に到達して、やっと自分の内から形をつくり上げることが出来た気がします」。

 

 

「WOODLAND」 2012年 162×162cm

そして今、押元は更に新たな世界を切り開こうとしている。トルソーから木や花など自然の造形物に主題を移し、その表現を模索。「何を描いたとしても、自分の世界観を発揮できる作家が目標。将来の到達点を目指し、今すべきことを実行していくだけです」。安寧を許さず、歩み続ける押元一敏。その道の先、表現の行き着くところまで追い続けていきたい。(取材/和田圭介)

 

 

 

 

 

 

押元一敏さん:プロフィール

1970年千葉県生まれ。95年東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。2000年同大学院美術研究科博士後期課程美術専攻満期退学。98年に三溪日本画賞展で大賞を受賞。05年より「波濤の会」、08年より「ShinPA!!」に出品。2012年は個展をはじめ、「第1回Artist Group-風-公募展」で入選。12月19日~25日、髙島屋日本橋店 美術画廊「花信風 第1回AG風小品展」出品(京都・大阪に巡回)、2月16日~5月12日、「ShinPA!!!!!!!」(おぶせミュージアム・中島千波館)出品。現在、横浜美術大学准教授。

 

※【関連ページ】 「花信風 -第1回AG風小品展-」

 

「新美術新聞」2012年12月1日号(第1298号)より

 


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